秋都にみんなを任せて、家によって髪を整えなおして髪紐で縛ったあたしはまず、一番隊に向かった。
隊主室の中にいるのは…と。じいちゃんあたしの動きよんでるなぁ。
窓枠に足を掛け、体を滑り込ませる
「…来たの。このたび結成された零番隊の隊長を務める、狛村じゃ。」
「よろしくお願いします」
あたしは、目の前にいる面々に頭を下げた。
…ここまでかな?
だって、目の前にいるのは…あたしが依頼した、先生たちだもの。
十四郎兄さんが、真っ先に意識を取り戻してじいちゃんに詰め寄った。
「…どういうことです、先生」
「護廷十三隊に、草鹿として所属するための条件よ。中央四十六室、及び王族からの」
「………の霊力のせいか」
「うん。それに…隊員になれる実力を持っている子達が、予想以上に多かったのもあったんでしょ?じいちゃん」
あたしの言葉に、もう、それが決定事項なのだ、というのを思い知ってくれたらしい。
左陣さんは、何も言えずにあたしをただ眺めていた。
「そうじゃ。零番隊の隊員は、含めて、10人じゃ。全員が席官となる。
おぬしらの隊のものも何人かおるぞ。心当たりはあるかの?」
「…一人。うちの四席なら…もしかしたら」
「あたりだよ、お兄ちゃん。羽美ちゃんでしょ?」
「…そうか。結成は昨日だな?」
「どうしてそれを…?」
十四郎兄さんが、楽しげな表情であたしに向き直った。
なんかあったっけなぁ。
「田中がやけに嬉しそうだったからな、薬持ってくるとき。言葉を濁していたから、何か合ったんだろうとは思ってたが」
「あとは、ボクのところの牙狼くんと…日番谷くんのところの三席君。他の子は知らないなぁ。狛村は心当たりあるかい?」
「…儂の隊に…一人おるな。」
「あぁ、深弥くんね。あとは…実際にあってもらったほうが早いかな。
春水兄さんにはもう、お願いしてあるんだけど…」
言葉をつなぐのを一度止めて、じいちゃんの方に視線を向ける。
ゆっくりと頷いてくれたのを見て、改めて3人に向かった。
「零番隊のメンバーに決定した子達の中で、まだ自分の霊力を満足に扱えない子達がいるの。
もちろん、席官の子とかもいるけど…力を隠していた状態のままだったから
体も慣れていないし…。で、先生をお願いしたいの。」
その言葉に、お互いの顔を見合わせて改めてあたしに視線を向けてくる。
よし。決まったかな。
「……十四郎は、基本鬼道かな?ボクは斬術を教えよう。」
「わかった。それが一番だろうな。」
「…だとすれは儂は白打か。瞬歩に関しては、が一番よいじゃろう」
「うん、もちろん。でもある程度はもう歩法に関しては大丈夫だと思うから
あたしも生徒に参加する。体慣らさなきゃ」
あたしの言葉に、ふと気付いたのだろう。
十四郎兄さんが頭を悩ませている。
…なにかあったっけな?
「…教えるのはかまわないが…霊力を開放しながらの教育の場合…周りにばれないか?」
「そこは心配要らないの。だってじいちゃんったら、うちらの訓練場に結界作っちゃってるんだもん。
しかも思いっきり秘密裏に。」
「…………なるほど。それならまったく不都合はないな。」
そのとおり。全員がある程度の開放をしたって関係ないくらいなんだよね。
まぁ…、本気で戦う必要があるかどうかもまだ、いまいちどうだろうって感じだし。
「今から全員にあわせるから…、じゃあ、じいちゃんまたね。」
「うむ。気をつけての。」
「はーーい。」
三人を連れて、あの家に向かった。
瞬歩でしかも完璧に気配を消して向かってるから、誰も気付いてはいないだろう。
家の中に入って、地下に作られた訓練場の入り口に入る。
入ってすぐに、入り口を閉めてから訓練場に向かった。
二重構造になっている。霊力の漏れは、危険だからだ。
「兄さん。左陣さん」
「…なんだい?」
「霊力、抑えないでくれる?」
「……どういう意味だ、それ。」
自分たちが既に抑えていることを見越しての発言だと、気付いたのか
いぶかしげな表情になる、兄さんたち。
あたしは、正直に答えをこぼす。
「あの子達…特に零番隊と護廷十三隊の掛け持ちの子達は、自分の霊力が
どれだけ大きいものか自覚していない。自分から奥に封じ込めてたから。」
「………言いたいことはわかったよ。つまり…荒療治なわけだね」
「まぁ、簡単に言えば。」
あたしも、ある程度までの霊力は抑えていない。
この場で最高ランクまで出すのはある意味危険だから。
中に3人を招き入れると、ちょうど秋都が白雷を全破棄で放ったところだった。
その後の秋都の発言に兄さんが、自分たちの存在を教えるように、声を放つ。
全員がバッと振り返った。
秋都はともかく、席官及び平隊員のメンバーは、固まってしまった。
「…いつの間におこしになられたんですか」
「今」
「…しかも、先生方まで全員お越しですか」
「一応最初だしね。」
「…本当に霊力の高い子達ばかりだなぁ…。」
「…確かに」
兄さんたちは一応ある程度の霊圧を抑えずにここに立っている。
並の死神なら、すでに立っていられなくなっているだろう。
あたしと、十四郎兄さんと、春水兄さんと、左陣さんの霊力を受け止めないといけないんだから。
「隊長も久しぶりに打ちませんか?赤火砲」
「…遠慮しとく」
「あ、じゃあボクやろうか?」
にいさんったら…。
ひょこひょこと的の近くまで向かう兄さんにくっついてあたしたちも傍に立った。
やっとこさっとこ、状況を頭が理解したらしい牙狼が、声を荒げた
「京楽隊長?!」
「いいじゃん、ボクだって久しぶりなんだよ」
「…京楽、お前詠唱覚えてるのか?」
十四郎兄さん、残酷だよ。
そんなさらりと言いはなたなくったってー。
でも兄さんもある意味図星なのね。
…どーせ忘れてるわけないけどー。
「…まったく。お前らしいな。」
「だってこのごろ打つ機会なんてないしー。」
「まぁ、確かにそうなんだがな。」
兄さんは、片手を差し出した。
久しぶりかもしれないなぁ…こういうの。
「…破道の三十一、赤火砲」
うん。さすが。
兄さんの詠唱破棄の赤火砲の威力に、全員が固まっている。
その状況を見た兄さんが苦笑交じりに口を開いた。
「…君たちにもこれくらいは出来るよ。ただ、自分たちの霊力を理解していないだけだ」
「それを教えるために、俺たちが居るんだ。もな」
「……俺も覚えなおそう。教師ぶってる場合じゃないですね」
冗談交じりの秋都の言葉に、笑顔を浮かべてみんなを見渡した。
ひとしきり笑ったところであたしは、みんなを紹介することにした。
「えっと、先生を改めて紹介するね。初対面の子もいるから。」
「あぁ、じゃあ自分からいった方がいいでしょ。
ボクは京楽春水。八番隊の隊長を務めてる。まぁ、一応斬術の指導に当たるから。よろしくね」
『よろしくお願いします』
あたしが、春水兄さんたちから紹介しようとしたところで、あたしの動きを止めて自分から言った。
もう、そういうところはきちんとしてるんだもんな、春水兄さん。
それを見て、十四郎兄さんも、改めてみんなに視線を向けた。
「次は俺か?…浮竹十四郎だ。十三番隊隊長を務めている。まぁ…主に鬼道を教えることになると思うが…
知ってるものは知ってるが、俺は少し病弱なので、調子がいいときのみになると思う。」
『よろしくお願いします』
最後の左陣さんの方になったとき、あたしは、ちょっとだけ期待をこめて左陣さんに向いた。
…きっと、大丈夫だから。そんな意味もこめて。
左陣さんが、鉄笠を取った。
全員の息が一瞬止まったのがわかる。
「儂は狛村左陣。七番隊の隊長を務めておる。見てのとおり人とは異なる容姿をしておるので
ほとんどの時間を鉄笠を被ってすごしておる。わしは主に白打を教えることになるだろう。」
「よろしくお願いします!」
誰よりも早く、頭を下げて声を上げたのは深弥だった。
深弥の声に、他の子たちもそれぞれに頭を下げて、同じ言葉をつないだ。
そこで、思いっきりわくわくした声で、羽美ちゃんと春ちゃんと奈菜ちゃんがあたしに声を掛けてくる。
「隊長、隊長。」」」」
「どうかした?」
三人で一度顔を見合わせ一度うなずきあった後、代表、という感じで奈菜ちゃんが
「すっごくすっごく…触りたい衝動に駆られるんですけど!」
「…………ぶっ!!!!」
「…だって、すごいなんかもふもふしてるっていうか…」
「でもなんか、さすがに嫌がられるかなぁ…って…どうですかねぇ?」
「んー………。左陣さん左陣さん」
自己紹介も終わったから鉄笠を被りなおそうとしているところを止めて。
全員に向かってにっこり。
「なんじゃ?」
「いっちゃえーーーー!」
「わぁい!!!」」」」
「な、なんだ?!」
左陣さんに飛び掛った。
まさかそういう行動に出るなんて思ってもなかっただろうから、左陣さんはしっかりと倒れそうになってる。
「わーー、ほんとにもふもふーーー!」
「可愛いーーーーー!!!」
「か、可愛い?!」
「ず、ずりい、お前ら!」
その全員の動きに、深弥が思わず、といった口調で叫んだ。
ふふ、一番飛びつきたかったのは深弥だよねー。
「じゃー、深弥くんもくればいーじゃーん」
「そーそー」
「………」
3人がそれぞれ、耳だの頬だのをおもいっきりもふもふしながら深弥にさらりと言い放つ。
予想外の反応に左陣さんはちょっと固まったまま。
「…したたかだなぁ…ここの女性陣は」
「ですねぇ…」
男性陣は、ちょっとまだぼーぜんと見てる感じがあるけど。
まぁ、大丈夫かな。
結局誘惑に負けた深弥もしっかりとさわりに行ってます。
ため息混じりにその状態を眺めているのは、秋都くんと牙狼。どうやら、見たことがあったらしいです。
「わぁ…まじでもこもこだー…」
「……よ。」
さすがに少し苦笑気味の表情になったのに気付き、名を呼ばれたので視線を向ける。
同時に、まとわり付いていた隊員があたしに視線を向けてくる
「なぁに?左陣さん」
「………わしは、どうしてよいのかわからん。」
「ふふ。別に嫌でなければもうちょっと触らせてあげて?」
「………わかった」
結局その後、数分は、全員がまとわりついたままであった。
「改めて、みんなも自己紹介しようか?」
「…あ、はーい。」
改めて全員で並びなおす。もう、左陣さんも鉄笠を付けるのはあきらめたらしい。
とりあえず、とあたしは秋都に視線を向けた。
「一番簡単だし、席官順に行こうか?」
「じゃあ俺からですね。零番隊副隊長を務めます、坂内秋都です。ご存知のとおり、十番隊の三席も務めております。」
「天駆奈菜です。三席を務めます。四番隊で十席も務めております。」
「四席を務めることになりました、前崎 藍です。よろしくお願いします」
「五席、臣 深弥です。七番隊隊員も務めてます!お願いします!」
「…六席の坂内春美です。兄のおかげで今この場にいます。よろしくお願いします」
「七席、藤堂大地です。更木隊にいます。よろしくお願いします」
「八席の田中羽美です。十三番隊四席も務めています。よろしくお願いします。」
「柚木牙狼です。九席、務めます。八番隊の十二部隊にいます。よろしくお願いします」
それぞれをしっかりと眺めながら自己紹介を聞いている、三人。
あたしも改めてみんなの力を眺めていた。
…じいちゃんったら、ほんとにずるいなぁ。
「…なるほどね。単純に霊力の強さで分けたんだね、山じい」
「うん、あたしも今気付いた。」
「うむ。そのようだ。…今日は何をしようか?」
「最初だし…鬼事?」
あたしが、鬼事?と3人に問いかけた時、同時に笑いが起こった。
昔のあたしの教育も何故か鬼事からだったのだ。
今考えたら瞬歩の勉強にもなるし、ある程度の肉体の慣らしにもなるんだ、って言うことが良くわかるんだけど。
「ちなみに僕らも今日は1日ここにいられるから。ただし、浮竹は、体の調子がよかったら、っていう但し書きつきだけど」
「……そんなに念を押さなくても無理はしない、京楽」
「信用ないよ、特にあたしと春水兄さんには」
「そのとおり。じゃあ、とりあえず鬼事からかな?」
その言葉に、鬼事の意味がつかめていないのが全員から見て取れた。
笑顔を浮かべて、あたしは緋衣を脱いで死霸装のみになる。
「鬼事は、鬼ごっこのこと。鬼ごっこって言っても…歩法の練習だと思ってくれたらいいから。
お相手はあたし。あたしを3回捕まえるまで走り回ってもらいます。」
「順番ですよね?俺からだ。隊長。よろしくお願いします」
すぐに意味を理解したらしい秋都を見て、あたしは微笑み、す、っと動き始めた。
とはいってもまだ、誰でもできる程度な歩法の初歩だ。
すぐに、傍で動き出した秋都の手が、あたしを捕まえた。
「一回目です、隊長」
「うん。じゃあ、二回目。頑張ってね」
あたしは速度を上げた。
うん、ちゃんと付いてきてるねー。よろしい。
「よし、二回目だね」
「はい。」
「…ふふ。開始」
三回目。あたしは、残像を残しながら動き始める。
さすがに秋都も少し必死になってきたかな?
「…くっ…」
「おしい、秋都」
チョコチョコあたしを捕まえそうになるんだけど、一歩足りないなぁ。
ふふ。まぁ、これは限界までやってもらうのが目的だからねー。
「…っ!」
「はい、よくできました。」
最後はちゃんとあたしの速度についてこれたね。
すた、っとあたしが立つと同時にそのまま秋都がへたばった。
「きっつー……。」
「そりゃ、必死になるまでやってもらわなきゃ。次は奈菜ちゃんね?」
「…はい。よろしくお願いします」
秋都がずるずるともとの位置に戻ったのを見てから、あたしは動き始めた。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
欲望に任せて書いたのがわかる回です。
もふもふと抱きつきたいのは、私の欲望ですので。
