お、もう帰ってきてるー。
外から一応気配をうかがったところ、数人の人間が居る。
もちろんその中には、乱菊さんや、も含まれるのだけど。


「失礼します…」
「あぁ、!」


笑顔を出迎えてくれるに、うん、もうすぐ言えるかも。と思ったりもした。
だって一番の隠し事をずっと持っとくのはつらいもん。

折角出来た果てしなく上以外の友達だもん。
って言うか実際きっとあたしのほうが年上だけど。


もうさすがにあたしも何年生きてるかなんて忘れた。


でも一年一年がすごく大事。


こんな風に生きていけるのも全部、左陣さんのおかげなんだから。



だからこそ…後悔だけはしたくないんだ。




仕事も終わった食事の席。
乱菊さんの言ったとおり、確かに安くておいしいこのお店はあたしもかなり気に入った。
うん。ここはいい感じかも


さっきまでの間にあたしは、一つ決心をつけていた。


「落ち着いたらさ。今までずっと話せなかったこと。はなすから。
「……なに、イキナリ。あんたが深い話しないのなんていつものことじゃない」
「うわ、へこむ。今回話すこと以外はあんたに隠し事なんか無いんですけど」
「…マジなんだ。」
「うん。そうだな…来週には話せると思う。それまでは…あたしが話せないから」


その言葉にふと、思案をめぐらせる
ひとつのことを思い出したのか、箸をおいた。


「それはあんたが、毎年この時期にお墓参り行ってくるって言って学校休んでたのと同じ理由?」
「……そうだね。そのとおり」
「わかった。じゃあ、それが終わるまではこれ以上聞かないでおく」
「…ありがとう、
「しんみりした話は終わった?二人とも」
「はい。すいませんー」
「はいはい」

今まで話に口を挟まないで居てくれた乱菊さんに感謝しながら店員さんを呼んだ。

「……緋衣って言うの、ありますか?」
「…少々お待ちを」

…あぁ、やっぱり小声にして大正解。
実を言うと、緋衣というのは、お酒。
あんまり出回ってないんだけど…なんとなく、ありそうな気がしたんだよね。
お銚子を一つ持って戻ってきたおばさんは、あたしのまえに置きながら苦笑を浮かべた


「あまり入らないものだから、メニューには入れてないのによくわかったね」
「…なんとなく飲みたくて…あったらいいなぁ、って思っただけです」
「ふふ、好みの渋いチビちゃんね。はい。3人分のおちょこ。」


いわれなくたってわかってるやい。
周りが今までお兄ちゃんとかしか居なかったんだから仕方ないでしょ。
そう思いながらあたしは、お銚子を持って、全員分注いだ。


「…これは?」
「チビちゃんに感謝しなさい。知ってる人にしか出さないお酒なんだから」
「おばちゃん。常連のあたしにも?」
「ごめんよー。でもこれは…何しろ数が少なくってね」


あたしは、もう一つおちょこをください、といってみた。
不思議そうにしながらも、持って来るわね。といって下がってくれた
ほとんど同時に、現れた人。


「乱菊ちゃん、この可愛い子達はいったい誰だい?」
「あら、京楽隊長」
「…ん?この匂いはもしかして…」
「おやまぁ、京楽くんじゃない」
「おばちゃん久しぶり。味が恋しくなってきてしまったんだよ〜。」

…うそつけ。大方あたしに気付いてたんだろう。
まったく、関わるなっていったのに

おちょこを持ってきたおばさんから受け取って机に置いて立ち上がった。
あたしのその動きの意味がわかったのか、同じことを考えていたのか
もほとんど同時に立ち上がった。

「…草鹿と申します。明日から、十一番隊四席を勤めることとなっております。」
「松本と申します。十番隊に本日から勤めております」
「ご丁寧にありがとう。まぁ、そんなに硬くならなくっていいよ。ボクそういうのあまり好きじゃないしね。
それにここはそういうものは関係ない場所だからね」

そういってあたしたちに座るように促して、自然とあたしの隣に座ってくる。
もう、最悪。

持ってきてもらったお猪口に、お酒を注いだあたしは、おばちゃんに話を振る

「一口、飲みませんか?お仕事中だろうけど…」
「…ふふ、じゃあ、ご相伴に預かろうかね」
「おばちゃん、ぼくにももらえるかい?…これは緋衣だろう。」
「…まったく酒に強い子だ。ただし、私が飲んでからだよ、京楽くん」

そういったおばさんが、お猪口を受け取ったのを見て、あたしは二人にも持つよう促した。

「よっし。じゃあ、の四席就任と、この出会いに、乾杯っ!」
「乾杯!」」」


乱菊さんの言葉に、おちょこを合わせあいくいっと口にする。
あぁ、久しぶりだなぁ、この味。
ほんとに、帰ってこれたんだなぁ、って気がする


「さぁて、私は仕事に戻ろう。京楽君、つまみはなんにするんだい」
「そうだな、軽く摘めるもの」
「はいはい。少し待ってるんだね」

そういって下がって言った後、お兄ちゃんの足をさりげなくけってやり
新しく全員に注いだ。

「こんなお酒あったのねぇ…。すごくおいしいわ」
「一度だけ飲んだことがあったから…忘れられない味なんだ」

その言葉に、ぴく、っとお兄ちゃんが反応する。
…そうだね、お兄ちゃんは知ってる。

このお酒は、左陣さんと、あたしと、お兄ちゃんたちをつなぐお酒なんだから。
だから、この二人にも出来るなら、飲ませたかったんだ。


「緋衣の意味を二人は知っているかい?」
「いえ…は、しってるんでしょう?」
「うん」
「…でもまぁ、まだ教えるつもりはないようだね。君は。」

そんなふうにくくく、と笑いながら言われたあたしは苦笑気味に頷いた。
これもあのことに関わっているから、と伝えるために。
ふぅ、とため息をついたにあわせて、おばさんがお兄ちゃんの分のお酒も運んできた。

「…しかし、乱菊ちゃんがこんな可愛い子達と知り合いだったなんてねぇ」
「あたしの妹ですよ、は」
「…はい?」
「もう会えないって思ってたんだけどね…。こんなところまできてくれた。
…正直、かなりびっくりしたんだけど…嬉しかった」


…よかったね、
おにいちゃんもかなりびっくりしてるみたい。
あたしが、これを飲ませた理由も、同時にわかってくれたからだろうね。


「そうか…。このお酒の意味を知ったら驚くよ。」
「…え?」
「それはこのお嬢ちゃんに聞くことだね。ボクがいうのは無粋だ。」


ね?とあたしに向かって微笑んだおにいちゃんの表情は
いつもあたしや、十四郎兄ちゃんに向ける笑顔だった。


「君たちの再会に、乾杯」
「…ありがとうございます、京楽隊長」
「君がそんなにしおらしいのは久しぶりだね…本当に。乱菊ちゃん」
「一言多いですよ隊長。そんなことだから七緒にそっけなくされるんです」


わ、そんなこといわないでよーー。と慌ててるおにいちゃん。
…誰だっけ、七緒って。
そんな人居たっけ?…うーん……。


、進み早くない?」
「え?」
「もう無いわよ。これ」
「あー……まぁいいか。どうする?。明日も仕事だし帰る?」
「…うーん………もう少し菊姉ちゃんと飲んで行く」


そういったの手にはメニューが握られていた。
まぁ、それもありかな。
あたしは…どうしようかな。もっかい着替えるのもなんだしなぁ…。


「じゃあ、このお酒の残りは二人に上げよう。ボクも帰るよ」
「えー、いいんですか京楽隊長ー。」
「お祝いだよ。それじゃあね」

あたしは、きちんと自分の分のお金を払って、お店を出た。
店の外でお兄ちゃんを待っていると、出てきたおにいちゃんが苦笑を浮かべていた。


「…まったくびっくりするよ。乱菊ちゃんとの気配が一緒にあるんだから」
「ふふ。でも理由がわかったでしょ?」
「あの子がのともだちかぁ…うん。よかった。」


お兄ちゃんのよかった、の意味がなんとなくわかる。
十四郎お兄ちゃんと出会ったのは、霊術院だって言ってたもん。
おにいちゃんもきっと、あのときのことを思い出してくれている。
あの時間は、とってもあたしにとって大事なものだったからね。


「あの子たちには言うのかい?」
「うん。全部言う。来週には。」
「…そうか、そんな時期なんだね」

そうだよ。もうそんな時期なんだよ。



もうすぐ、あの日がやって来るんだよ。




あたしが『狛村』になった日が。



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あと1話で一章終わります。
やっとCP表現が出ましたが…、設定のとおり、京浮ですから!(爆)
直接的な表現はなしです。…作っても裏にするかな
大事な複線のひとつがやっと描けました…。

(おまけ)

「…ところで、七緒さんってだれ」
「うちの副隊長さん。」
「大方また変なくどき方してるんでしょ、お兄ちゃん!」
「…どうしてお見通しかなぁ…ほんっとにはかなわないなぁ」
「十四郎兄さんに見捨てられても知らないから」
「………言葉がいたい…」



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