瀞霊邸のはずれ、あたしの家―狛村家に足を踏み入れた
ドアが開く音におばあさんが出てくる


「ただいま、美幸さん」
「…まぁ!まぁまぁ、ちゃん」
「久しぶり!」
「元気にしておられましたか?」


美幸さんは、あたしに戦い以外の礼儀作法や、料理等を教えてくれた、最高で、一番のお師匠様。


「もちろん!まだ、ここには住めないけどね」
「まったく…左陣さんが寂しがりますよ」
「わかってるよ。だから、今から会いに行くんじゃない」


そういって美幸さんと一緒にあたしの部屋に向かった。
あたしの部屋は、出て行ったときのままきれいに保たれている。
さすが美幸さんv

「お手伝いは?」
「いらないよv師匠がいいからv」
「本当にちゃんは人を喜ばせる達人ですね」
「そんなことないよー」

死覇装を脱いで、着替え始める。
そう。着物だ。

ひさしぶりぃーー。こういう着物好きだなぁ。

これは、左陣さんがあたしをみんなに紹介する時に着るように言ってくれたもの。
こんなきれいな服があっていいのか、と思ったものだった。
ずーっとあたしのお気に入りの着物のひとつ。
…そのころから体型が変わっていないのが悲しいんだけど



何気にざんばらになっていた髪を整え、くくる。
この髪紐は、夜一姉さんがくれたもの。とっても気に入っている。



よし、準備完了!


「気をつけていってらっしゃいましね」
「うん、いってきます、美幸おばあちゃん」
「ふふ、それも久しぶりね」


そうだよねぇ…。
いっつもせわしない訪問ばっかりで、ついつい美幸さんのままだったけど
こんなに近くにいるんだもん。


「ちゃんと帰ってくるから。もう少しかかるけど」
「はい、その時は盛大にお祝いいたしましょうね」
「うん!」


そういってあたしは、着物のままで瞬歩を使った。
単純に歩くのが面倒なだけなんだけどね


まずはやっぱり、七番隊だよねv


隊主室のそばで気配を探ると、居るのは、左陣さんと射場さんだけ。
らっきぃv


「失礼します」
「…!?」
「左陣さん!お久しぶりです!」


…久しぶりでいいよね?
うん。この格好は久しぶりだもん。

あたしの格好を見てびっくりする左陣さん。
驚かせるために着たんだもん、大成功!

「お嬢は…?」
「お初にお目にかかります。狛村左陣が養女、狛村と申します」

左陣さんが息を呑むのがわかった。
そのまま、す、っと鉄笠を外す左陣さん。

「射場、本日の仕事はもう無いだろうか?」
「……ござらんが、めずらしゅうございますな、隊長」
「儂が鉄笠をつけるのを嫌うのだ、は」
「そういうことですよ、射場様」

なんとか自分を取り戻したらしい射場さんに微笑を向ける。

「そうじゃったか……殿。わしは様なんてそんなたいそうな立場じゃござらん」
「では、射場さん、と呼ばせていただきますね」

くっくっく。という笑い声が聞こえてくる。
ばっと振り向くと、後ろに居たのは春水お兄ちゃん。

「春水おにいちゃん!」
「やぁ、お帰り。君のその姿を見るのはあの時以来だねぇ。
しかし…その口調は本当に笑いを誘うよ」
「ただいま帰りました…お兄様。」
「……ごめん、怒らないで敬語使わないで」

冗談交じりのお兄ちゃんがあたしの返した言葉に苦笑交じりに止める
ぽかぁん、とさせられてしまっている射場さん。
とりあえずお兄ちゃんを放置して、射場さんに向き直った

「…すいません、驚かせてしまって」
「射場にも紹介するつもりだったのだが、そのまえにの最大のわがままを叶えてしまってな」
「…わがままですか」
「そうなんです。いずれその意味もわかると思いますので、お待ちくださいね」

いずれ書類を持ってここに来ることもあるだろう。
でもその時には口止めしなきゃ。
そういえば左陣さんが昔この人は十一番隊に居たって言ってたなぁ。

「…ところでまた、何でそんな格好なわけ?」
「久しぶりに家に帰ったから。美幸おばあちゃんに会いに」
「あぁ、なるほどねぇ。」
「十四郎おにいちゃんは、雨乾堂よね?」

そう言って、荷物を見せる。
昨日のうちに作っておいた、和菓子。
実は、左陣さんたちがとても気に入ってくれているものなのだ。

「……それはそれは。楽しみだ。ボクもいっていいのかい?」
「もちろんよ、お兄ちゃん。一緒に行きましょう」
「儂も行こう」

それじゃあ、失礼します。
なんていって出て行った3人に
残された射場は、ぽっかーーーーん、という顔をしたまま。それでも、いってらっしゃいといえた自分に拍手をしながらも

……わしゃどうしたらよいんじゃろう。

と思っていた。






雨乾堂。



あたしは、左陣さんの肩に乗っかっていた。
さすがにここまで来る間はきちんと降りていたけどね。

途中の道になったとたん、左陣さんが抱き上げたのだ。
同時にあたしは、ああ、覚えてくれていたのだ、と思った。


幼心にあの時の思い出は強く残っている。

ああやって抱き上げてもらった日のこと。

抱っこされたまま、お兄ちゃんたちや、じいちゃんに会ったことも。


あのころのただ無邪気だったあたしには、とてもうれしい話だったのだから。


「あぁ、お前か春水」
「すごいお客さん付きだけどねぇ、今日は」


あたしはその言葉にそれていた意識を取り戻した。
そして、ぴょんっ!と飛び降り十四郎兄さんに飛びついた。


「……おっと、あぁ、お帰り。
「ただいま、十四郎にいちゃん!」


んぎゅっ!と抱きついたあたし。
そう。あたしはこの人にもお帰り、といって欲しかったのだ。
だって、大好きな人たちの一人なのだから。

あたしたちはそのまま奥の部屋へと案内された
あたしが来たことに驚いても居ないだろう。
それはそうだ。だってこの3人のまえであたしは、自分の気配を消したり、変えたりすることなどないのだから。
そして彼らもまた、そうしてくれるから。


「十四郎兄さん、出迎えありがとう。
でもね、具合が悪いのはいただけないなぁ…折角着たのに」
「…まったく、には敵わない」
「ふふ。わかってるでしょう、兄さん」
『本当に…。お初にお目にかかります皆様』


あ、空翔のバカ。
まったくもう…。

「………貴公どこからはいってきたのだ」
「ん?…お前たち鈍感になったのか?」

あ、兄さん気付いた。
その言葉にはっとした二人が改めて気配を探った瞬間
性格の悪い笑みを浮かべて空翔が言った。

『俺の名前は空翔といいます』
「あたしの斬魄刀よ、空翔は」
『俺は、ずっとを守る。早く…全部扱えるようになれ、

うっ………。耳がいたい…。
そう。実はもう卍解も出来るのだけど…。扱え切れてなかったりする。
さすがの空翔もそれにはあきれ返ったらしく。あの緋の鳥の姿はこの頃見せてくれない。
もちろん、どちらも彼なんだけどさ。

言い残されたあたしは、苦笑交じりにほかの二人が腰をおろしたのを見手から離し始める。


「…一応、もう卍解までたどり着いてはいるの。でも、まだあたし、扱いきれてない。空蓮華飛翔(くうれんげひしょう)を。」
「空蓮華飛翔、か。空翔というのが始解かい?」
「うん……あと、試してみたいことがあったの。……だから、来たの」

あたしはそういって、本来許されるはずの無い物を出した。私の斬魄刀だ。

「空舞う緋の羽は、輝きをもちて命を与える。空の20 緋羽風花(ひばねかざはな)」

そのとたん、緋の鳥が姿を現す。
そして、兄さんの上に行く。
お願い。効いて。
すがるような思いであたしは、兄さんに向けてこの力を放った。

しばらくの間のあと、緋の鳥は姿を消した。
ふぅ…と息を吐いたあたしに、十四郎兄さんが苦笑を浮かべている
胸を、押さえながら。

「………、なにをしたんだい?」
「回復系鬼道?」
「俺にきくんじゃない。しかも今の言霊はなんだ?」
「……空翔と考えた言霊。空翔は回復と攻撃の複数能力型なの」

その言葉にはぁ…とため息をついた3人。
あたしはそのため息の意味を理解していなかった。
別に他の人間にこの能力を見せることは無いけどね。
よっぽどでもない限りは。

「…まったく」
「そばに立ちたいだけよ、兄さんたちの。
ただ…、お兄ちゃんたちのそばで…自分の力を役立てたいと思った」
「こういう子だ、は。儂はもうそれを嫌というほどに突きつけられておる」
「…まぁ、大分楽にはなった。」

どういう意味ですか左陣さん。
っていうかむしろそう思ってたのね…。悲しいかな否定出来ないんだけど。

「……苦労がしのばれるよ。まさか十一番隊に入隊するなんてねぇ」
「あは。ついでにもっと驚かせます。明日からあたしあそこで四席」
「なんだってぇ(と)!?」」」
「あたしもそこまでだと思わなかったの!今回の実力判断で…、斑目さんと斬魄刀で戦った。」


その言葉の意味に気付いた三人は、それぞれ苦笑したままで額を押さえたり頭を抱えたりしてしまった。
うう、ごめんなさい。でもさぁ…あたしだって、びっくりしてるんだから許してよ。


「………頭が痛い。」
「ボクもだよ…。教えてた分、才能については否定するところなど無いんだけど、無いんだけど…」
「儂もだ…だが………危険が増える」
「わかってるよそれくらい。死神になった以上それは当たり前でしょう?」

きっぱり、と言わしめたあたしに、苦笑とため息がこぼれている。
ホント、苦労させる子供でごめんね、左陣さん。
あ…そういえば許可取ってなかった。


「それからね…」
「わかっておる。そろそろじゃろう、草鹿に行く日は。」
「………うん」
「準備は整えておる。気にするでない」


…ありがとう、左陣さん。



全員に和菓子を振舞った後、約束どおりおじいちゃんの元に向かった。
隊舎の外から気配をうかがったら一人じゃない上に結構やばい人間が中にいることがわかったので
窓のそばで大人しく待っていたところを、窓を開けて引きずり込まれた。

よ、なぜ遠慮をする。」
「人が居るからと思って静かにしてたのに…」
「かまわんじゃろう。のう、冬獅郎よ。この娘の名は……」

おじいちゃんを止めて、腕から降りて、しっかりと自分の足で立って目線を向けた。
あまり背の変わらない彼―日番谷冬獅郎に。

「……こんばんわ、十番隊隊長さん。まだ、には内緒でお願いします。これだけは自分から言いたいから。
私の本当の名前は、狛村。七番隊隊長狛村左陣の養女なの。草鹿に居たころに、拾われた」
「この娘のわがままにわしは弱くての。草鹿で入隊することを許してしまったのじゃ
まぁ、いずれはそなたの部下二人とともに会うこともあるじゃろうな。その時まで黙っておけ、冬獅郎よ。」
「………………わかった」


おじいちゃん、フォローありがとうv
実際ほんとーーーーーーに甘い。でも、食えないじいちゃんだもん。
腐っても爺。

思ってることは内緒です。もちろん。


「あ、じいちゃん。お土産」
「おお、の和菓子か。それは楽しみじゃ。後で頂こう。」
「十番隊隊長さんは明日食べれますよ。乱菊さんに二人分渡すから!」
「…どうりであいつがまじめに仕事をしてると思った…今日食事にでも行くんだな」


まじめに、って…あぁ、乱菊さんって、春水にいちゃんのお友達だっけ…。
苦労してるんだなぁ、隊長さん。


「この格好じゃやばいから、死覇装に着替えなきゃいけないけどね」
「もう着替えてしまうのか…もったいないのう……。」
「…ごめんね、じいちゃん。でも…」
「わかっておるわかっておる。またたまにはそういう姿を見せておくれな。」
「うん、ここに戻ってきたから。もう、ちゃんと帰ってきたから。」

なぜかそばに居る羽目になってしまっている日番谷は半ばどうしたものか…と思いながらこの場に残されていた。
実際この状況で口を挟めるものは約3名しかいなかったりするわけで。


「…」
「じゃあね、おじいちゃん、十番隊隊長さん」


そういってまた窓から出て行ったは、近くの森でさっさと死覇装に着替えた。
そして、改めて十番隊隊舎に向かう。
髪はさっきのままではなく、草鹿のときの、すこしざんばらな、あの髪型だ。



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まず、射場さんを出したかったんです!(エセ広島弁に関しては突っ込みなしでお願いします)
日番谷さんが異様に絡んでくるのは趣味なんですけどね(実際最初は日番谷夢予定だったのです)
オリジナル技は、白哉さんの技のイメージにすこし近いかなーっていう感じです
あと4,5話でやっと設定が全部本編で出る…!

脱稿4月14日。



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