夫婦の絆の法則
「・・一体どういうことなんだ?」
あ・・。ジャンの・・声、今した・・。
重い瞼を何とか上げようと努力してるのに、体がすごく・・だるくて。全然顔を上げられない。
ひそひそと抑えた声が宥めるようにして頭の上を流れるのを、オレはただぼおっとしながら聞いていた。
「悪い、ハボ。・・中央の連中の席と俺らの席、近くセッティングされててな。
向こうのお偉いさんがエドに目ぇ付けて、無理やり引っ張っていかれちまったんだ」
「それでもホークアイ中尉が心配して付いていって下さって、かなりエドワードさんをかばって下さっていたんですが。
・・何しろ向こうは大勢で来ていて、かなり強引に・・」
「あの、あのあの、ハボック少尉!・・エドワードくん、ずっと待っていたんですよ。
すごく・・淋しそうで、その、何というか・・」
「・・いや、分かってる。遅れてきた俺が悪い。・・くそ、あの連中・・あとで見てろ」
───ジャン。どうしたの・・なに、怒ってるの?
あ・・あたまが、すごく、いたい・・。
心細くて。・・大切な、あの人の手で撫でて欲しくて。
オレはふらふらする頭のまま、安っぽい肌触りのシーツからゆらっと頬を上げた。
───見慣れない部屋。宿の・・造りだよね、この部屋。でも・・一体どこなんだろう・・?
朦朧としながら何とか上げた目線の先、オレの寝てるベッドから離れた入り口に、見慣れた青い軍服がいくつも見えた。
「・・エド!」
あ、みんな・・いる。ジャンも・・。
「じゃ、ん・・」
何だか頭が定まらない。引きずり込まれそうに・・眠い。
「・・エド!!」
血相を変えて走り寄ってきてくれたジャンに、オレは精一杯笑いかけて腕を伸ばす。
「・・・・じゃ、ん・・。じゃ・ん・・」
お仕事お疲れ様でしたって。・・言いたいのに、何故か口が回らなくて。
そのまま何も言えないでいるうちに、ジャンのあったかい腕に掻き抱くように抱きしめられた。
身体ごと、ベッドから抱き上げられて。
・・どうしたの、ジャン。どう・・したの。どうして、そんなに・・辛そうなの・・?
「エド・・!・・ごめん、よく頑張ったな?大丈夫か・・、っと!お、おい、しっかりしろ!」
「じゃん・・・。なんだか、め、が・・くるくる・・まわって・・」
・・ジャンがいる。もう、大丈夫。
ただただ、もうそのことが泣きたいほど嬉しくて。
オレはふわふわと回り出し急速に暗くなっていく意識を、その瞬間ふっと手放した。
次に眼を開けた時には、もうものすごく気持ちが悪くなっていた。思わず呻いて胸を抑えた。
「エド!・・エド、分かるか?大丈夫か?」
「ジャン・・」
頭の上すぐに、焦燥に駆られてるジャンの顔が見えた。大丈夫だよって、笑いたいのに。・・声さえ出ない。
舌が渇いて、口の中張り付いてしまってるみたい。・・すごく、気持ちが悪い・・。
その時、ひんやりと冷えた手がオレとジャンの間からすっと伸びてきて、そっとオレのおでこに触れた。
・・あ・・。すべすべしてて、気持ち・・いい。
ものすごく胸がむかむかしていたのが、その冷たい体温のおかげで少し治まったような気がした。
「熱が少しあるかもしれないわ。もう少し休んでから動かしたほうがいいかも知れないわね」
・・あ。ホークアイ中尉の手だったんだ、このおでこの手。すごく・・気持ちいい。
「そうですね。・・エド。エド・・ごめん。お前をこんな目に合わせちまって・・」
お布団から出ていたらしいオレの指先が、ぎゅっと握られた。
・・あ、これは・・ジャンの手。おっきくてだいすきな、・・オレの・・ジャンの手。
「無理やり飲まされちまったんだってな。───くそ、何て連中だ・・」
「ごめんなさい、ハボック少尉。・・何とか、エドワードくんから興味を逸らせようとしたのだけど・・」
な、に・・?ジャンも中尉も・・何でオレの話・・してるの?
そう言いたいのに、言葉が───なんで出ないんだろう。
口の中で舌が干上がってしまったみたい。その癖妙に粘っていて・・気分がますます悪くなる。
「最初っからエドワードくんに絡んでたんですよ!子どもが軍にいるのが気に入らないとか何とか言って・・!」
───あ、この声はフュリー曹長だ。曹長、珍しく何だか怒ってる・・?すっごく早口で、興奮してる・・みたい。
「今大佐が抗議に行かれています。うまく話を付けてきていただけるでしょう。・・あとは、エドワードさんの事が心配ですね」
ファルマン准尉の声・・だよね?いつもと同じ、淡々とした声だけど。・・オレが心配って・・何?
───きもちが、すごく、・・わるい・・。胸の中に、急激に逆流するような感触があった。
そして、背中から暗い闇の中にどんどん回転しながら墜落していくような眩暈。
・・イヤ。こんな、みんながいる場所で、───・・きたく、ない・・。
「・・ハボ。エドの顔色えらく悪いな。・・医者呼ぶか?」
「いや、多分、・・・」
ジャンの青い瞳が、オレをそっと伺うように見つめて。そして、少しだけ笑ってからブレダ少尉の肩を叩いた。
「───すみません中尉、それにお前らも。・・ちっとだけ、オレとこいつだけにしといてくれるか?」
「そうね。・・何かあったらすぐ呼んでね」
「ありがとうございます」
「・・隣の部屋に、俺らみんないるから」
「ああ。・・悪いな」
「とんでもない」
「・・お大事に、エドワードくん」
最後に遠慮がちにかけられた曹長の声に、答えたいけれど。・・ひどい気分で、とても口が開けない。
そっと入り口の扉が開き、そして皆の気配が一気に減った。───オレとジャンだけが残されて。
眉を顰めてるジャンを、声を出せないまま必死にオレは見つめた。
・・助けて、ジャン・・。苦しい・・くる、しいの・・。
・・ジャンが、そっと頷いた。
「───エド。もう我慢しなくていい。ここで、いいから。・・な?」
そっと身体を支えられながら上半身が起こされる。
そして、オレの背中にジャンの大きな手が当てられた瞬間、───もう・・堪えられなくて。
「・・・っ、・・・うぅ・・、っ・・!」
喉の奥から込み上げて来た苦い液体を、オレは全て吐き出した。・・胃が、胃ごと出てきそう・・。
嘔吐しながらも、頭が酷く痛んで、身体中が圧し折られそうに激しく疼いて。
背中を摩り、そしてオレの身体を支えてくれているジャンの胸の感触だけを僅かに感じながら
オレはそのまま苦しい時間が過ぎ去るのをひたすら待ち続けた。
───ようやく、気分が少し落ち着いてきた。冷やしたタオルが乗せられて、すうっと呼吸が出来る。
細めに開けてくれた窓から、夜の澄んだ空気が流れてきて、・・気持ちいい。
オレが一度口を濯いだ水差しを洗い直してきたジャンが、オレの枕元すぐ傍にしゃがみこんだ。心配そうにオレを見つめてる。
おずおずと手を伸ばせば、上から守るようにしてすぐにぎゅっと握られた。
オレはそっと、・・大好きな人の名前を呼んだ。
「・・ジャン」
「エド・・。少し落ち着いたか?」
「うん。吐いちゃったら・・少しだけ、気持ち悪いの・・落ち着いた、みたい・・」
「そか。・・よかった」
「ジャン・・。ここ、打ち上げの会場じゃないの・・?」
「いや。1階でまだお偉いさん達は馬鹿騒ぎしてるよ。・・お前が倒れて、皆がこっそりここにお前を運んでくれたんだ」
「そうなの・・。ごめんね、皆・・途中で抜けてきちゃったんでしょ・・?」
「いんだって。───こんな辛い時まで、そんな事ばっか気にしやがって。お前って、ほんとに・・」
ようやく少しだけ笑ったジャンが、ぎゅっと顔を歪めて。
そのまま布団ごとぎゅっと抱きあげられ、胸の中に閉じ込められてしまう。オレは焦ってぱたぱたともがいた。
「・・エド?」
「じゃ、ジャンっ・・!だめ・・は、離して・・」
「・・どうして」
「だ、だって、オレ・・きっとすごく、───汚い・・から・・」
「ばか。・・そんなの、何でもねぇよ」
「ジャン・・」
そっと、無骨な指先で何度も何度も頬っぺたを撫でられた。見つめれば、青い瞳が揺れながらオレを見つめ返してくれる。
「ごめんな。・・お前のこと守ってやれなくて。ほんと、ごめんな」
苦しそうなジャンの声。・・駄目。ジャンを見てたら、・・急に涙腺が、緩んじゃうよ・・。
オレは、一気に涙が溢れ出すのを感じながら、きゅっと夢中でジャンの背中に手を回し、軍服を引っ張るようにして抱きついた。・・もう、耐えられなかった。
「こわ・・かったの、ほんとは。・・知らない・・軍の人が、いっぱい来て。
中尉とも引き離されちゃって、すごく・・お酒を勧められて」
「ごめん。・・ほんとにごめんな」
しゃくり上げるオレを、優しく抱きしめながらジャンが何度も慰めて。
オレはぷるぷると顔を振りながらも、涙がもうほんとに止まらなくなってきた。
「司令部の───み、皆のことを、酷い言葉で・・けなされて。オレ、頭にきちゃって・・。
言い返したら、散々冷やかされて、・・それからおさけ・・そのまま次々に、何杯も・・飲まされて・・」
「エド・・ほんと、辛くさせてごめん。何も出来なくて、ほんとごめんな」
低い声で詫びながら、ジャンの手がオレの髪を弄るようにして撫でてくれる。
・・あ・・緊張が、するすると解けて。安心がココロいっぱいに満ちてくる・・。
「・・本当にごめんな。もっと早く来るつもりだったんだが、この合同演習に人数が裂かれてたせいで
なかなか抜け出せなくてな。・・いや、こんなの言い訳だ」
「ううん。・・大丈夫、ほんとに。・・ジャンが来てくれれば、もう・・安心だもん・・」
「エド・・・・」
顎の下がすっと掬われて、優しく見つめられる。
キスが欲しくて反射的に目を閉じようとしたオレは、はっと気付いてジャンの腕を拒んだ。
「・・エド?どうした?」
「き、キスはダメ・・!だって、・・だって・・」
「───さっき吐いたからか?」
「・・う、うん・・そう・・。こんな口で・・キス、なんて・・」
悲しくて、涙目でオレが小声で囁くと、何でもないようにジャンが笑った。見惚れちゃうほど柔らかいジャンの表情。
「・・お前、俺のキス、欲しくねぇのか?」
「そ、それは・・」
「・・会えなくて。嫌な連中に囲まれて、嫌な目に遭わされて。
・・そうしてやっと会えた大事な亭主と、・・ほんとにキスしたくねぇのか?」
・・意地悪を装った、優しすぎるジャンのそんな言葉に。
オレはもう本格的に溢れだして来た涙を止めることが出来なくって、そのまま両手をきゅっとジャンの首に回した。
途切れそうになる呼吸を一生懸命繰り返して、オレはたどたどしく呟いた。
「ほんとに、こんな・・汚い、のに・・、キス、してくれる?」
「───お前と、キスがしてぇ」
「・・・・っ・・、お、オレも・・ジャンと、キス・・したかったぁ・・!」
ぽろっと大粒の涙が零れ落ちたその瞬間、甘く優しく唇が塞がれた。
どうしても逃げそうになるオレの唇を、優しく、でも強く抑えてジャンがキスを続ける。
ずっと緊張して硬直していたオレの身体から、ふるふると力が抜けて・・いっちゃう・・。
「・・ん・・・・ぁふっ・・」
唇を何度も何度もなぞられて、無意識に吐息が漏れて。
そのままジャンの舌先が、促すようにオレの唇を割ろうとする。
「・・や・・、だ、だめ・・」
自分の口の中がどうしても気になって、羞恥で拒もうとしたのに。
「・・エド。口、開けて?───お前の舌、吸わせて?お前の歯、舐めさせて?」
「んんっ・・!」
促す言葉が余りに甘くて、・・目が、回る・・。
そのまま震えながら開いた唇から、舌がすうっと忍び込んできた。
何の躊躇もなく、濃厚に舌が吸われ、ねっとりと絡まってくる。
オレの咥内を、まるで・・清めてくれるかのように。
ちゅっと、音を立て重なるそのキスの果てしない甘さに、もう何も・・考えられなくて。
オレは殆ど縋りつくようにして、もうひたすら・・キスに溺れた。
ようやく、離れた唇。名残惜しそうに離れ際、ぺろっとジャンの舌先がオレの唇を舐めた。・・思わず赤面しちゃう。
「・・甘ぇ」
「う、嘘・・。だって、オレの口・・」
「舌は甘くて蕩けるし。・・唇は吸うほどエロくピンクに染まんな」
「や、やん・・」
堪らなく恥ずかしくて。慌てて俯こうとしたところに、もう一度キスが来た。
「・・気分、大丈夫か。吐き気・・まだするか?」
優しく囁かれ、オレは自分の身体を目を閉じて伺ってみる。・・思わず赤くなっちゃった。
ジャンが少し笑ってオレを促す。
「・・ん?どうした、エド?」
「えと・・。ジャンとキス、・・したら、あんなに気持ち悪かったのが・・全然、へいきに、なったみたい・・」
真っ赤になりながら囁いたら、ジャンがようやくいつもの悪戯っぽい笑いを浮かべてオレを見つめてくれた。
「な。・・俺がいれば、何でも大丈夫だろ?」
「はうう・・。ジャンが、いれば・・ほんとに、全部・・大丈夫だね・・」
「そう云うこと。・・夫婦の絆ってヤツだよな?」
甘い言葉に、顔がじんと熱くなる。思わずお布団で顔を隠しちゃう。
「は、恥ずかしい・・」
「はは。・・良かった、お前が、何とか・・無事で」
きゅっと強く強く抱きしめられ、オレはもう・・涙いっぱいで。泣き笑いでジャンにしがみ付いた。
・・安心して流す嬉し涙って、ほんとにぽろぽろって音を立てて溢れるんだね・・。
ジャンと二人で手を繋いで、扉を開ければ。
「───エドワードくん!だっ大丈夫ですか!?」
真っ先に、転がるようにしてフュリー曹長が走り寄ってきてくれた。・・あれ、曹長、目が赤い。
「・・フュリー曹長?」
思わずオレが呟いてそっと曹長の目元に手を伸ばしたら、顔真っ赤に染めてわたわたっと曹長が飛びのいた。
「わわわわっ!!」
「こら、エド。・・お前、亭主の前で他の男にちょっかいかけるなよ?」
後ろから甘ぁく耳元でジャンに囁かれ、オレまで赤面して飛び上がった。
「ば、ばか・・!」
「こいつ、どうしようどうしようって、さっきからえらくうるさくてな。随分心配してたんだぜ」
「曹長・・あ、あの・・心配してくれて、ありがと・・」
ブレダ少尉の言葉にオレも少し赤くなって頭をぺこんと下げたら、ますます曹長が真っ赤になってうろたえてる。
その曹長の頭を、長身のファルマン准尉が上から笑いながら押さえた。
「エドワードさん、気分はどうですか?」
「准尉にも迷惑掛けちゃったみたいで・・。もうオレ、平気だから」
「それは良かった。古来より酒というものが未成年者に与える肉体的害については・・」
「おいおい、やめろやめろ。病人相手に小難しい話するんじゃねぇ。・・エド、落ち着いたか?」
「ブレダ少尉・・。ほんと、ごめんね。オレのせいで、折角の中央との顔合わせの機会なのに、皆途中で抜けちゃったんだよね・・?」
・・今日の合同演習後の打ち上げが、今後の昇進やら何やらに影響があることくらい、オレだって分かってる。・・思わず、俯いた。
「ばーか。そんな事より、お前に何かあったら、ハボに俺ら全員殺されかねないからな。
そっちのほうがよっぽど始末が悪い。・・嫉妬深い亭主を持って、お前も大変だな?」
「ぶ、ブレダ少尉ってば・・!」
身体が一気に熱くなる。言い訳しようとしてる傍から、ぐいっとジャンの腕が伸びてきて胸の中にすっぽり抱きしめられちゃって。
「じゃ、ジャンっ・・!は、離して・・は、恥ずかしいってばぁ・・!」
「嫉妬深くて悪かったな、ブレダ。お前も早くこんな可愛い女房持ってみやがれ」
「ばーか。オレはロリのシュミはねぇ」
「ぶ、ブレダ少尉まで・・!」
ふるふると震えたところに、そっとオレの肩に優しい手が置かれた。
少し困ったように、ホークアイ中尉が首を傾げてた。
「・・ほんとにごめんなさいね、エドワードくん。あなたを、守ってあげたかったのに・・。ごめんなさい」
「ちゅうい・・。ホークアイ中尉・・!」
そっと囁かれた声に、何だかまた止まったはずの涙腺が緩んで。
オレは、急に苦しくなってきて・・しゃくり上げながらホークアイ中尉に抱きついた。
・・甘い、優しい中尉の仄かなコロンが、気持ちをそっと慰めてくれるみたいで。
「・・エドワードくん」
「違うの・・。中尉がオレのこと・・すごく庇って・・くれてたの、知ってるもん・・。
一生懸命、オレから注意を逸らそうとしてくれてたのに、オレが・・み、皆の悪口言われて、かっとなって・・。
挑発に乗ったオレが・・オレが、悪いの・・」
涙がどんどん溢れてくる。抱きついたオレを、中尉の柔らかい指先がそっと撫でてくれた。
───その時、珍しくホークアイ中尉がにっこりと笑った。
オレだけでなく、周りのみんなまで固まって中尉を凝視してる。
「・・皆、っていうのは正確じゃないわよね?
───あなた、『士官学校一の落ちこぼれ少尉を側近に登用するとは、東方司令部もとんだ人材不足だな』ってあちらの将軍が仰った瞬間に、火がついたでしょう?」
「・・あ・・」
・・それって、俺のことっすか、という気の抜けたようなジャンの声を真後ろで聞きながら、オレは頬が一気に熱くなるのを感じながらわたわたと手を振り回した。
「ほ、ホークアイ中尉!そ、それ言っちゃダメ・・!」
焦りまくるオレと、ぼけっとしてるジャンを交互に見ながら、中尉がもう一度くすりと笑った。
綺麗な細い指先が、赤面してるオレの前髪をそっと梳く。
「大事な旦那様を悪く言われては、黙っていられないわよね、妻としては。・・あなた、本当にいい奥さんね?」
「エドー・・。俺、今すっげ感動してるー・・」
「じゃ、ジャン!ホークアイ中尉!・・もお、みんなまでそんな・・笑わないでってばぁ!!」
ジャンにすりすりと抱きつかれたまま、失笑してる皆を前にオレは必死に叫んだ。
「・・ほんと、仲良くて羨ましいですー、ハボック少尉」
「夫を立てる妻のいじらしい愛情ですか。ふむ、東の国の言葉に習えば、鴛鴦の契り、と言ったところでしょうか」
「エンオウの契りぃ?何かやらしい言葉だな」
「も、もぉ!み、みんな、からかわないで・・って、きゃん!」
いきなりがばっとお姫様抱っこにされてしまって、オレは思わず高い声で悲鳴を上げちゃって。
にやにやと、まるで締まらない顔でジャンが笑ってる。
皆の前での抱擁があまりに恥ずかしくって恥ずかしくって、オレは足をぱたぱたさせて抵抗した。
「ジャンっ!ば、ばかぁ、離して・・っ!」
「そーかそーか。お前ぇ、俺のためにそんなに無茶してくれたんだなー。あーすげぇ感激。この礼は・・今夜のエッチでたっぷりたっぷりさせて貰うからな?」
「や、やぁん!・・そ、そんなのお礼じゃないってばぁ・・!」
「うーん。俺も早いとこ結婚するかなあ」
「そうですねぇ。結婚もよさそうですねぇ」
「うーん。僕はまず、・・その、デートとかしたいなあ」
「おっとフュリー曹長、随分奥手だな」
「・・皆、そろそろ会場に戻りましょうか。大佐が今頃、下でご苦労されてる筈よ。東方司令部の丁重なご挨拶を、皆でこれからさせて頂きましょうか」
「賛成!」
「あら、ハボック少尉は来なくていいのよ。・・貴方の大事な奥様を、丁寧に看病してあげてね?」
オレを抱きしめたまま、ジャンの顔がますます蕩けてく。・・うう、恥ずかしいよぅ・・。
「へい。・・そりゃもう、手厚く看病しまっす!」
「ちゅ、中尉ぃ・・!お、オレ、オレ・・」
「・・たっぷり甘えておきなさい、エドワードくん」
「エド。またな。ゆっくりしてけよ」
「それでは、お先に」
「エドワードくん、・・ええと、頑張って」
「が、頑張ってって・・何ソレ、曹長・・!」
さくさくと出て行く皆の後に、抱きしめられたままのオレと、抱き上げてまるで離そうともしないジャンだけが残されて。
・・ああ、また・・おうちじゃないとこで・・、え・・えっちなこと、されちゃうの・・?
一人赤面したまま頭混乱中のオレの前で、ぱったんと扉が閉まっていった。
皆を送り出したジャンが、ゆっくりとオレを抱き上げたままベッドに戻っていく。そっとベッドに下ろされ、横たえられた。
どきどきと、一気に鼓動が早くなってるオレのおでこに、しゃがみこんだジャンの手がそっと優しく触れた。
・・思わず、ぴくんと震えちゃう。
「───さ、少し寝な。ここで見てるから」
「え・・・・」
びっくりして、オレは思わずジャンの手を掴んだ。少し目を瞠ってるジャンに、オレは赤くなりながら小声で囁いた。
「えと・・えっと。ジャン・・こ、このまま・・何も・・シない、の?」
きっと益々赤くなってる筈のオレを、少し笑いながらジャンが眺めてる。・・そのまま、くしゃっと前髪を梳かれた。
「・・あのな。俺、これでもお前の亭主だぜ?具合の悪い大事な奥さんに、そんな無茶セックスさせるわけないっしょ?」
「せ・・」
思わず恥ずかしい言葉を言ってしまいそうになり、オレはぷしゅうっと頭のてっぺんから湯気が出そうなほど恥じ入った。
そんなオレに、ゆっくりとお布団をジャンが掛け直してくれた。
ぽんぽんと、まるで子どもみたいに上から軽く叩かれて、気持ちがゆっくりと静まってくる。
じっと見上げたら、苦笑したジャンが目を閉じ、そっと淡いキスを唇にくれた。
「・・ジャン・・」
「寝な。・・もう、なんもお前を苦しめること、起こんねぇからさ。俺が、ずっと・・ここにいるからな?」
「じゃ、ん・・」
───瞼が、どんどん熱くなってくる。・・もう、泣いてばっかり・・オレってば、ほんと・・。
ジャンの前だと、何故かうんと泣き虫になる自分が、うんと恥ずかしい・・。でも、どこかとっても、・・幸せで。
そんなオレの気持ちがまるで読めるみたいに。あやす様な優しいジャンのキスが、そっとオレの瞼に押し当てられた。
ひくっと呼吸を思わず震わせれば、もう一度唇にキスが来て。
この上なく優しいジャンの顔。・・大好きな、ジャンの・・顔。
「ありがとな、エド。お前の気持ち・・すげぇ嬉しかった。お前が俺の奥さんで、ほんと───よかった」
感謝の言葉が、ココロにゆっくりと染みてくる。・・泣いて、しまいそう。・・あんまり幸福すぎるから。
ゆっくりと、お布団の上からぽんぽんと繰り返し叩いてくれるジャンの手の動きを感じながら、いつしかオレはふうっと気持ちいい眠気に引き込まれてゆく。
しっかりとジャンに手を握られたまま、目をゆっくりと閉じた。オレを・・オレのことを、世界で一番愛してくれる人の気配が・・気持ちよくって。
ゆらゆら揺られながら、オレはそっと囁いた。ジャンに・・聞こえてるかな?
───大事な、ほんとに大事な旦那様を守れる、強い奥さんに。
オレも、少しずつ少しずつ・・なっていけるかな。そうだと、とってもいいな、・・って、ね。
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管理人のコメントコーナー
青子さんのサイト20000HIT記念リクの「ハボエド子で、ほのぼの夫婦と軍部」でしたv
もう、エド子がいいなぁ…!!!
青子さん、大好きですvvこれからもどうぞよろしくv(これはコメントか?)