自分の頭のなかでいろいろなことがよぎっていたとしても
あの人、に愚痴愚痴言われるのはいやだから。
そんなふうに頭を切り替えたハボックは、自分のメモを取り出した
「一応さ、俺も仕事だからいろいろきいとかなきゃなんねぇわ…
フルネームはさっき聞いたから…」
「誕生日とかですか?」
「うん、名前はこれであってんだよな?」
ハボックがメモに書いた彼女の名前を見せると
彼女はしっかりとうなずきをかえしている
エドとアルの二人は静かに成り行きを見守っていた
「じゃあ、誕生日だけど」
「7月の22日。今年から19年さかのぼってくれたらいいんだと思います」
彼女は自分のすんでいた国の年とここの年があっているなんて考えはないらしく
さらりとそんな発言を繋いでいた
ハボックがペンを走らせていると、改めて書いていて思い当たったのか何気にあせっている
「ってことは…え、待てよ…」
「どうしたんだよ、准尉」
「フュリー軍曹も同じ年だ」
「フュリー軍曹?」
「え、うそ、姉のがしっかりして見えるんだけど俺」
本人は今頃しっかりとくしゃみをこぼしているだろう
彼女はまた、同い年だという人にあってみたいな、なんて思ったりもしていたが
口にする暇もなくその話題はすぐに流れて、別の質問が並んでいった
「あときいとかなきゃいけねぇことなー…」
ハボックがペンをいじりながらぶちぶち言っていると
病室のドアがノックされた
すぐに誰が来たのかわかったのか、ハボックがメモを閉じ
自分の座っていたいすをあけた
「失礼するよ」
入ってきたのは、黒髪の男性と、金髪の女性
彼女は目を見開いて、思わず言葉を繋いでいた
「炎…」
自分でも意識していなかった言葉が繋がれたのがわかり
すぐに口をふさいだ彼女
その行動にいぶかしげな表情を向けたのは、男性の方
「なんだね?」
「い、いえ…あの…たいさ、さんですか?」
「そう、私が大佐だ。ロイ・マスタングという」
「……藤本といいます」
軽く頭を下げると同時に名を名乗った彼女
逆に名乗らずに本来の彼女の名乗り方で名乗った
戻っていた大佐にまた、いぶかしげな表情になる
「…フジモト、という名なのかね?」
「がファーストネームです。この国の名乗り方で名乗るなら、・フジモトになります」
「ふむ、ハボックや鋼のからいろいろ聞いたようだな」
「鋼の…?」
その言葉が人を指し示すことはわかっても、誰を指すのかまではわからなかったらしく
不思議そうな声で、その言葉を反芻した彼女
その反応でそのことに関することを話されていなかったことを知った大佐が付け加える。
「この国には国家錬金術師という資格があってね、私もその一人だ
私は焔の錬金術師で、彼、エドワードが鋼の錬金術師、というわけだ」
「あぁ、それで…。ぴったりですね、大佐さん」
「…なんでだね?」
あ、という表情をエドが浮かべた
その表情の裏に、エドとアルが異様に彼女になついた理由があるのだろう
そう思ったハボックはおとなしく成り行きを見守っていた
「大佐さんは、基本が赤。きれいな炎の色だもの」
「…何の話かな?」
「ユウ姉は、人の魂の色が見れるんだよ。俺とアルもさっきやられてさ」
「そういうことです。ちなみにエドとアルの基本の色は一緒の金ね」
「ほほう…、基本というとほかにもあるということかね?」
そう、大佐が返した瞬間、彼女の表情が変わった
驚き一色になったのである
そして、すごくうれしそうな声で、小さくつぶやいた
「……すごいな、こんな反応してくれる人たちがいるんだ」
「どうかしたかね?」
彼女が何かをつぶやいたのがわかった大佐が彼女を覗き込んだ
びっくりしながらも、首を横に振ってなんでもないことを示して
質問に対する答えをつむぎ始めた。
「あります、これはあたしの見え方なんですけど
3つの色が見えるんです、みようとしなきゃほかの色は見えないけど
基本の色はその気で視たらすぐに見えるから。大佐さんの赤はとっても強いです」
「ふむ…」
大佐がうなずいたのを見た後、彼女の表情が変わり
まるですべてを暴き出すような目で、大佐を見つめ
そして、少しつらそうな顔をしながら言葉を繋いで、話題を変えた
「あの、さっきから気になってたんですけど…後ろの方は?」
「…紹介していなかったかね」
「はい、紹介していただけますか?」
大佐もほかのメンバーも、彼女が何を見たのか気になったものの
一瞬見せた苦しげな表情に、きいてはいけない気がしていた
「ハボックと同じく、私の部下の一人だ」
「リザ・ホークアイといいます、階級は中尉よ」
「といいます」
彼女はぺこりと頭を下げた後さっき一瞬大佐を見た目で中尉を見て、微笑を浮かべた
それは、あからさまにほっとしている感じがまざった微笑だった
「彼女のも見ることができるのかね?」
「えぇ、朱色です」
「そうか」
「…そういやハボック准尉のは?」
エドの言葉に改めて彼女はハボックを見た
一瞬顔をしかめ、そのまま口を開いた
「ハボックさんは…青だね」
「へぇ…瞳の色と一緒かー」
「エドとアルもね」
その言葉に周りの人間の行動が一時停止した
エド、アルを除いた面々では、あるが
「…くん、アルフォンス君の…」
「あたしの魂の見え方ですよ」
「………」
大佐が言いづらそうにその言葉を繋ぎだしたとたん
会話をとめて、大佐を黙らせる
そんなことを言われてしまえば黙るしかないのだ
「エドの体のことも、アルの体のこともわかってます
あたしの力のことを言ったときに言いました。
ハボックさんや、大佐さん、中尉さんがご存知なこともそのときに聞いてます
ほんとは初めて二人を見たときからわかってたけど、ハボックさんが知っていないことだったら困ると思って
ハボックさんが出て行った後、タイミングを見て言ったんです」
彼らのことを知った上でここまで簡単に受け止められるのは
彼女のこの力のことがかかわっているのだろう
きっと、彼女はこの力のことで、いろいろなことにあってきているのだ
「だからあたしには、ちゃんとアルの顔がわかるんですよ」
「魂にも姿があるんだって知って、姉が言った姿聞いてすっごいうれしくってさ」
「そのあと、いろんなことを話しましたよ、僕らのことをいっぱい
姉さんって呼んでいい?ってきいたのもさっきです」
アルの声は今までにないほど、幸せなもの。
彼にとって、自分がどれだけ不安定だったのかなど、わかるすべはない。
周り、特に兄にとってどれだけ大切なものであるかなど、聞くまでもないのに。
「ふむ、鋼のには珍しく、君になついているなぁ、とは思っていたが…なるほどな。
だが、君にならいずれは鋼のもアルフォンス君もなついていただろう、そんな気がするよ」
「そうかもしれないね、僕はそう思うよ」
「…まぁ、確かにそーだろな」
大佐の言うとおり、このことを知ることができたその力がなくても
いずれ二人になつかれていたのだろう、そんな気が、ハボックにもしていた
それだけ彼女は、人をひきつける感じがあった
それは、大佐や、エドとはまた違うひきつけ方だが
エドもアルも否定しなかったのを見てちょっとうれしそうな顔を浮かべる彼女
改めてそこまでの話に区切りがついたところで、大佐もエドの隣に腰をかけた
「力のこと、全部話すべきですか?」
「いずれは話してほしいが…それより、元の世界に戻る方法はないのかね?」
「ないと思います。来た方法もわかりませんし…。この世界で暮らしていきたいと思います」
ハボックもエドもアルも、否定を返すことなどできない
先ほどまでの話で、彼女はすでにここに残る、ということを決めてしまっているのだから
「ふむ、ならばなんとかしようではないか」
きっぱりと大佐が言い切ったのを見て、リザとハボックがいやーーーな感覚を覚えた気がした
だが、それは杞憂であった、とすぐに思えた
「問題はファミリーネームだろうな…うかつにでっち上げてあとで上に愚痴愚痴言われるのは至極面倒だ…」
「とりあえず軍内、士官以上の中にいないファミリーネームにしておけばよいと思います」
中尉はすぐに大佐の考えを見抜き、さらりと助言を加えた
もちろん、ハボックも中尉の言葉に意味を理解して自分のメモ帳をちぎった
受け取ったメモを見て笑みを浮かべ、ハボックに視線を戻した
「ほう、すばやいな」
「大方後で聞いておけって言われると思ったんで先手打っといたんですよ」
「この国での名前に関してだけは後日決めようか、君の意見も聞かねばならないからね。
プロフィールに関してはでっち上げるがな、ある程度決められたらまたハボックなり中尉なりを寄こすよ」
「はい、ありがとうございます、大佐さん」
笑顔を浮かべて彼女がお礼とともに「大佐」という言葉を繋いだとたん、彼が苦笑を浮かべた
「……できたら君には階級で呼んでほしくないね、君は軍人ではないのだし」
「あ、それもそうですね…じゃあ、マスタングさん、でいいですか?」
「とりあえずはそれでいいだろう」
意外とすんなり大佐の意見を受け入れた彼女はファミリーネームを音にあらわして微笑んだ
大佐もその反応にずいぶん満足げである
そのままの姿で中尉のほうに視線を向けた
「中尉、彼女に関しては君に任せるよ。女性同士の方がよいだろう
この国についても教えておいてやってくれたまえ」
「承知しました」
「ハボックも鋼のと、アルフォンス君、それから中尉とともに彼女にこの国のことを教えること」
先手を打ってハボックも残そうとする大佐だったが
そんなことをハボックが許すわけもない
承知、という前に中尉の方に視線をむけた
「中尉、車でこられました?」
「いいえ、歩きです」
「じゃあ、帰り、気をつけてください、まぁ、大将とアルがいるんで平気だと思いますけど」
「心配されるようなことはありません、車、早く返してきて頂戴」
「アイ・サー。じゃあ、行きますか大佐」
「おい、お前は人の話を…」
「上司をほったらかして自分だけ司令部に車で戻る部下がどこにいるんですか」
どきっぱり、と言い放ったハボックに返す言葉などなかったらしく
しぶしぶ(しぶしぶなのは大佐だけであるが)と二人は病室から出て行った
一瞬の静寂の後、まず口を開いたのは彼女であった
「えっと…中尉さん?」
「私も階級で呼ばないでほしいわ」
「…じゃあ、リザ、さんで」
「私はなんと呼んだらいいかしら?」
「、でいいですよ」
「じゃあ、ちゃん、でいいわね」
「はい」
とりあえずその決め事が終わったあと、エドが立ち上がった
アルフォンスも、兄のいきなりのその行為に慌てながらも立ち上がる
「俺らがいないほうがいい話もするでしょ?俺ら出とくよ」
「ありがと、エド」
「あとでいろいろはなそうな、ユウ姉」
「もちろん」
そういいあって、そのまま二人が部屋を出て行った。
そこで一瞬の間の後、ふぅ…とひとつ息を吐いた、彼女
まるで、緊張が解けたかのようだった
そのことに気づいた中尉が彼女を覗き込んだ
「ちゃん?」
「……緊張してたんですよ、あんなふうな反応されたの初めてだったし」
「…どういうことかしら?」
心底驚きと、そして嬉しさの混ざった声で繋がれていた言葉の意味を
まったく理解できなかった中尉が不思議そうに問いかけると
ゆっくりと顔を上げて、思い出すような表情を浮かべた彼女
「あたしの力って、やっぱり普通の人は持ってないじゃないですか」
「…そうね」
「だから、いつもはあれを思わず言ってしまった後って
だいたいみんな変なやつ扱いして、離れていっちゃうんです」
「…それは、私含め、エドワード君やアルフォンス君、大佐、准尉にはありえないわ」
「…え?」
中尉がいきなりいいきってしまったのに対して
彼女はあっけにとられるしかなかった。
今まで、彼女の周りにそんなことを言ってくれた人は
家族以外では、いないに等しかったから
「大佐、エドワード君、アルフォンス君は錬金術、の使い手なの
正直、あなたの力とは違うものだとは思うけど、それも私たちにとったら使えないものだわ。
彼らで慣れてしまっているから、さほどのことでは驚かないということ」
「そう、かぁ……じゃあ、大丈夫なんですね」
その問いに中尉は微笑みのみで答えた
中尉の言ったことに関して否定するものは今話題に出た者たちの中にはいないだろう
まさしく、ひとつの間違いもないのだから
― 私は、ここで生きていこう。たとえ、どんなことになったとしても ―
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管理人の言い訳コーナー
このお話で一応プロローグは終了しました
次に1話番外をはさみまして第1部が始まります
次のお話でやっと、彼女、という表現ではなくなります
の力、1つ目が出てきましたね。
力が出るたびに設定に追加してますので見てみてください。