退院の日の朝
昨日アルからもらった袋に入っていた服を着たが、病院の前に立っていた
そこに、私服姿のリザが現れた

「リザ姉さん」
「退院おめでとう、
「ありがとう、なんか変な感じだけどね…」

退院する、とはいってもほとんど次の日には完璧に動ける状態になっていたのだ
ほとんど入院が長引いたのは、ごまかしのため。
だから、カモフラージュの入院の理由は過労、ということになっている

詳しい設定としては、イーストシティで、エドとアルとハボックに出会い
そのままぶっ倒れてしまったので、とりあえず病院に入院した、ということらしい。

状況のごまかしはあるものの、すべてが作り事というわけではないので
まだ、ほかのメンバーとしてもおかしく思わないだろう

「これから一緒に暮らすんだよね」
「ええ、でも私は忙しくなってしまうと家にほとんど戻らないの、大丈夫かしら?」
「平気。いろいろ大変なんだよね、軍のお仕事って」
「そうね、大変といえば大変だわ」

リザの言葉に込められている、いろいろな意味。
場合によっては、人を傷つけなければならないこともあるのだ
そのことは、エドに聞いていた。
あぁ、だからか。

そう、は思った。
今まであった3人の軍人さん
リザ・ハボック・大佐に、見えていた黒はそこから来ているのだ、ということだから。

「でも大丈夫だって、明日エドとアルにこの町を案内してもらったら、いろいろすることも見つかるだろうから」
「そうね、なら大丈夫だわ」

歩きながら彼女たちが進めていた会話は、自然と彼らが作った設定にぴったりな会話になっていた
この数日で、リザとは本当の姉妹のような関係になっている
それだけ、二人はお互いを認め合っていた


「今日はこまごまとしたものを買って、それから家に行きましょう」
「うん」

買い物を続けているうちに、時間がどんどん過ぎていき
昼時には、彼女達の両手にこまごまとした袋がたくさんもたれていた

姉さん!」
「アル」

姉さん、という呼び方に、リザが少し驚いた顔を見せた
実は、昨日の時点で彼女が二人にこの国の名前で呼んでほしいと頼んでいたのである。
彼女にとって、もう『』と呼ばれる必要はなかった。

「兄さんと、僕からの退院のお祝い。あと、兄さんが、食事一緒にしないかって」
「ありがとう、アル」
「ううん」

渡された小さな袋をしっかりと受け取って、アルの導きについていく二人
傍目から見た彼らはさぞかし不思議な光景であっただろう
女性二人に、鎧が従っているのだから。
しかもそれがまた、不自然ではないから、余計である

「アル!」
「兄さん、見つけたよー!」

アルの導きでたどり着いたのは、いろいろな食事の取れる場所が揃ったストリートの近く。
エドがアルフォンスを見つけて手を上げていた。

姉、おめでと、退院」
「ありがとう、エド」
「中尉、こんにちわ、4人で食事しようよ」

どうやら、エドも、ほかの場所を探していたらしく少し息が荒い
リザは微笑を浮かべながら肯定の意味を混ぜた返事を返している

「ちょうどお昼時だものね、だから探してくれたの?」
「そういうこと。お手伝いもしたかったし」
「じゃあ、ここぞとばかりに使わせてもらうよ、エドたちのこと」
「…姉、その言い方恐ろしいんだけど?」

エドのその発言はかるーーく流され、4人はその近くのレストランへと入っていった
4人で座ることは座っているが、食べるのはアルを除いた3人のみだ

「俺のおごり、遠慮なく食べていーから」
「どの道一番食べるのはエドだものね」
「…さっきから一言多い…姉」
「ごめんごめん」

エドがむすくれた顔をしながらも言い返しているが
形だけの謝罪を浮かべてメニューを眺めている
アルやリザもいつものことといわんばかりの雰囲気を浮かべてとともにメニューを眺めている
エドは結局その3人の行動を見て、自分もメニューを眺めだした

それぞれの注文を終えた後、エドが自分の荷物の中から一冊の本を出してに渡した。
はそれの中身を確かめ、エドに視線を移した

「ありがと」
「簡単に見つかったよ」
「よかった、これで探しづらいものだって言われたらどうしようかと思った」
「何の本なの?
「童話集だよ。この国の」

エドもの言葉に笑顔を向けている
自分もよんだことがあったのだろうか
邂逅の表情を浮かべている

「童話集?」
「うん、言葉を覚えるのにいいかなぁ、って思ったからエドに頼んだの」
「…確かにいいかもしれないわね」
「そういえば簡単な言葉でつづられてるのが多いよね、童話って」

そこで、少しずつ料理が届き始め、その会話は終了になった
もちろん、食事中にもいろいろな会話は繰り広げられていたが
それはたわいもない話ばかりであった

全員の食事が終わり、会計を終えた後、少し心配そうな声でが問いかける

「エド、ごちそうさま。でも大丈夫なの?」
「へーきへーき」
「エドワード君の収入って私よりいいのよ」
「…え」
「国家錬金術師の研究費ってのがあってさ、それ」
「そーいうのがあるんだ…」
「その代わりすごく難しいけれどね」

リザの説明にはちょっと苦笑しながらも受け止めていた
そのままリザの家に向かい始めたところで
リザとの荷物をさりげなくアルとエドが取る

「あ」
「あら、ありがとう、エドワード君、アルフォンス君」
「いーよ、このくらい」
「ありがと…、エド、アル」

ちょっと照れくさそうな表情を浮かべた
実はそのあとこっそりと、もう一言つぶやいていた

「やっぱ世界が違うんだなぁ…」

その言葉の意味をつかめる人間は近くにはおらず
その呟きがとてつもなく小さな声であったことで、誰も問いかけるものはなかった
リザの家であるマンションに入ったところでエドが思い出したように言った

「俺ら中尉の家初めてだよね」
「そうね。軍部でしか会わないから」
「ちょっと緊張しちゃうかも」
「あら、気にしなくていいのに」

ドアを開けて中に全員が入ったところで、エドとアルが感嘆の意がこもったため息をついた
も内心、さすがだなぁ…と思った
丁寧、かつ清潔に仕立て上げられている部屋だ
女性の家、という感じである

「荷物はそこにおいておいてくれる?」
「あ、はい」
、部屋はこっちよ」
「え、あ、うん」

エドとアルが荷物をリビングにおいて、は奥に二つあったドアのうちの一つの前に立ち
リザの導きのもと中に入った
小さな部屋ではあるけど、十分な広さを持っている

「ハボック准尉が持って来てくれたあなたの荷物はそこにおいてあるから
あとはまたゆっくり増やしたらいいわ。」
「ありがとう、リザ姉さん」
「さて、エドワード君たちに手伝ってもらって
大体のもの、片付けてしまいましょう」
「はーい」

今日買ってきたもののうち、食器類や、ほかの家具についてをアル・リザが
エドとの私物となるものを片付けていくことになった

「これはどこなんだ?姉」
「えっとねー、そこの本棚」
「あいよ」

リザとアルの声はほとんど聞こえてこず
どうやら機械的に二人とも片付けているらしい

が、片づけを続けながら、さらりとエドにとっての爆弾発言を言い放った

「エド、いつごろ旅に出るの?」
「んー…まだ決めてねぇ…ってなんでそのこと…!」
「リザ姉さんとジャン兄さんの話の端々に出てきてたから」
「…姉がこの町になじんだら旅に出るよ」

正直、まだリザやハボック、エド、アルがいない状況で町を歩くのは少し無理がある気がしていたので
おとなしくその発言には肯定の態度を返していた

ある程度の片づけが終わり、エドがこまごまとしたものを片付けだした

「大体こんなもん?姉」
「うん、こんな感じかな。リザ姉さんとアルのほう手伝ってあげてくれる?」
「おー」

がその言葉と同時に、数少なく残した荷物に手を触れさせたのを見て
普通に返事を返しながら部屋を出て行った
心遣いがさらっとできるエドに笑顔を向けながら荷物の中身をはじめて表に出した

これといって目立つものがない中、不思議なものが二つ。
石のようなもの。

「これは、さすがに捨てられないもんな…」

それを服のポケットに入れて、他の荷物をきちんと片付けて
部屋を出る前に目を閉じて言葉を発し始める


“部屋は物を包み込み、人を落ち着かせる
どうか、私や彼女たちの安らぎとなるように”


その言葉に一瞬、部屋を光が包み込み、すぐに消えた
そして、目を開けたが部屋を出て行った



― これから始まる新しい生活
  幸せなものになりますように ―



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管理人の言い訳コーナー


ここで一応本編は一度ストップします

次の番外編は、ハボアイ・フュリー+・新キャラと続いて
セカンドストーリーに入ります。