お題『知らなくていい だから 知ろうとして』




浦原商店、奥。

この頃毎日のように繰り広げられる会話。


「ですから、忙しいんですよ」
「へぇ、じゃあなんであたしの相手が出来るの?」
「それはその手を離してからおっしゃってください」
「いや。離したら即効で居なくなるじゃない」

彼女の名は
彼女いわく、近所のアパートにすんで居るらしい。
アタシが彼女のことに関してしっているのはそのくらいだ。

「…分かってるなら離してくださいませんかねぇ」
「じゃあ、教えてくれたら離す」
「今度はなんですか」
「なんでもいいよ。もっと知りたいの。あなたが嫌がっても。知りたい」
「……仕方のないお方だ。じゃあ、お教えしますから手を離してください」
「いや。言ってからよ」


一度一度でしっかりと行動を見通してくる彼女には
もうこの手は通用しないらしい。


…前回は通用したんですけどねぇ。
好きな物を教えてやると、ふむふむ、と言う顔をして手を離した。

「へぇ。また今度作ってくるね!ってことで、いってらっしゃい、喜助さん」
「…行ってきます」


ニコニコ笑顔で手を離してくれる彼女に半分苦笑いになりながら
奥の部屋を出ると、目の前にはテッサイがお盆を持って立っていた。


「テッサイ」
「お茶をお出ししてよろしいですか」
「えぇ。よろしく、テッサイ」


いつのまにやら、店員全員に彼女のことが浸透してしまった。
…アタシも時間の問題ですねぇ。
いろいろと終わらせなければならない用事をしながら
ポソ、っと一言落とす


「…あんまりアタシにかかわらないほうがいいんですが…」
「いやよ。あなたがいくらいやがっても、って言ってるでしょ?」
サン!?」
「テッサイさんのお茶もいただいたし帰ろうと思ったの。
そしたら、複雑そうな顔で喜助さんが紙握り締めてるから」
「……」

うかつでしたね。
気配を感じませんでした。

「喜助さん」
「…はい?」
「あたしはあなたが…」
「……それ以上は言っちゃいけませんよ」
「どうして!?」
「アタシは…あなたが思っているよりいい男ではありませんからね」
「かんけいないわ。」


すっぱり、と言い切られてしまった。
…まったく、かないませんね。


「…なら、今度から教える変わりにサンのこと教えてくださいますか?」
「もちろん!」





あなたが知らなくてもいいと言うから

あたしはあなたがきになるの。


あなたが知らなくていいといっても

あたしは、あなたを知ろうとするわ。


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初挑戦の喜助夢でした。
管理人様、素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました。


hiroka humiduki. 06.09.04