夕刻。
あたしは休暇になってるからいいとしても…。
やばいどうしようこのまま家帰らないつもりなんだけど…
どうやって、ごまかそう。
そんな風に頭を悩ませていたら
戻ってきたらしい秋都が後ろから声をかけてくる。
「隊長。」
「あ、お疲れ様」
「そういえば、さんが、うちの副隊長に捕まってたからきっと今日帰ってきませんよ、家」
「……あたし顔に出てた?」
「え。あ、なんだ、隊長も帰らないつもりだったんですか」
「うん。せっかくだからね。あ、後で全員にももう一回言うけど。…敬語禁止」
「…わかり………」
禁止だって言ってるのに。という目でじーーーーーーっと見つめてやった。
うー…と真面目そうな顔を浮かべて結局ため息をついて。
「わかった。わかりました。隊長」
「よし。後でみんなにも言わなきゃ…。あたし敬語嫌いなの。」
だってほんとに敬語嫌いなんだもん。なんか突き放されてる気がして。
だから春水お兄ちゃんいじめる時にもわざわざ敬語使うんだけどね。
お兄ちゃんはこの世界が大好きで、でも嫌いなんだよね。
血なまぐさい物全部、大嫌いだから。
それに何が関わっていても。
そして、あたしも同じ。
守りたいけど、そのために剣を振るうのは好きじゃない。
煮物の仕込を終えて、あたしはとりあえず宴会の場にする部屋に戻ろうとして気配に気付いた。
入り口で牙狼くんが思いっきり春水兄さんに捕まっている。
あーあ。最悪。なんだかここに戻ってきてから春水兄さんに対していっつも思ってる気がする。
「春水先生、牙狼から手を離していただけます?」
「………(やばい、本気で怒ってる)」
春水兄さんの手がぱ、っと離されて、牙狼が、ふう…と一息ついたと思ったら、状況が頭に入ったのかわたわたとし始める。
あぁ、あたしの気配が体に残ってて帰りしなにつかまったのね。
で、思わず瞬歩で逃げたのはいいけど、ここまでしっかり春水兄さんに追いかけられてきた、と。
「牙狼、気にしないでいいわ。藍くんたちを手伝ってあげて。」
「…で、でも…隊長…」
「京楽隊長は、あたしの力知ってるから」
「じゃあ、説明は任せてもいいですね、隊長」
「…秋都」
後ろから付いてきていたはずの秋都がやけにしずかだな、と思ってたら
あたしの判断を待っていたのだということがこの発言でわかった。
春水兄さんも後ろにいた秋都が誰か思い出したのか、あ、という顔をする
「君は十番隊の三席の……」
ペコり、と秋都が頭を下げたかと思えば、牙狼の手をそっと握って、付いてくるように促している。
牙狼はまだ、少し気にしている部分が見え隠れする表情で、あたしと春水兄さんを交互に見ていた。
「牙狼、隊長が気にするなとおっしゃってるんだ。先ほどの話、もう忘れたのか?」
「……忘れるわけが無いじゃないっすかー。秋都副隊長。
俺、お気に入りの酒、家からとってこようと思ってたのに、京楽隊長に見つかっちゃったんですー…」
「おお、それはいいな、今から行ってこいよ。どうせ深弥と天駆と田中は遅いだろうから。」
「…田中って浮竹のところの…」
「今はまだ、探らないでください、京楽隊長。
我々があなたにご挨拶するのは…、隊長が認められた時だけです。」
にっこり、と笑顔を浮かべた秋都と、お酒を取りに戻った牙狼を見送り
あたしは縁側に兄さんを案内した。
後ろを向いたとたん、兄さんが息をのんだのがわかった。
「零番隊隊長羽織。…王族の方が作ってくださったのです。」
そう。つい先ほど授かった、零番隊の隊長羽織。
背中には十三番隊と同じく、零の文字。
「…」
「すべて話します。あの子達が知っていることも、知らぬことも。
ですがそれは…許されるならまだ、兄さんや、十四郎お兄ちゃんや、左陣さんにも知られたくは無かった。
本来なら…まだ、話すべきことではなかったのに。」
「…僕は、牙狼くんの霊力に気付いていたよ」
は、っとする。兄さんも隊長であることも事実なのだ。
たとえ兄さんがどれだけ争いごとが嫌いで、剣を握ることをきらう人だといっても
結局兄さんが一番物事を見渡す人なのだ、と。何度も思っていたのに。
「…兄さん」
「でも、牙狼くんが隠したがっていることにも気付いていたしね
さっき、一番隊隊主室に、霊力を隠している子達が全員集まってたのにも、気付いた
僕が知らない子達も。…その理由は、その背中にあったんだね。そして、二日前の…君の霊力解放にも」
「…うん。自分の力を…きちんと受け入れられた時に、零番隊を結成する。
…それが、あたしを護廷十三隊に入ることを認める…中央四十六室と王族の条件だった」
兄さんが息をのんだ。
当たり前だ。あたしの霊力を、あの方々が見逃すわけが無かったのに。
そしてあの子達もまた、隠し続けていたのに、見つかった子達。
ただ、自分に正直に生きている子達なのだ。
…違う。あの子達もそうだ。
ただ、その方法が違っただけ。
「…山じい、最大の秘密をまだ腹に隠しこんでたとはなぁ…」
「さすがのじいちゃんも、これ以上の譲歩はのぞめなかったみたいよ。
最初は…王族特務の話も出ていたんだから」
「………」
そう。それも事実。
あたしが霊力を操作できるようになった時点で、その話は出ていたらしい。
でも、じいちゃんがなんとか、それをとどめていてくれた。
その後あたしが霊術院の存在を知って、十三隊への入隊を望んだ。
じいちゃんは、そのために、改めての零番隊結成を、推し進めてくれたのだ。
「…ここにいる子達はみな、今の隊長格とほとんど変わらないか、それ以上の霊力だね」
「そう。それが零番隊…。王族特務と、護廷十三隊の間を持つこととなる、零番隊に属するものの、条件」
さきほど、全員がそろったのがわかった。
ここにいる時はみな、張っている気をとき、少し、霊力のタガが外れる。
そのための結界は既に張りなおした。
兄さんが来るまでは、兄さんたちには効果の無いものに、ついついなってしまっていたけど
今の結界は本気で、だれも気付かないほど強固になっているから。
「今から宴会かい?」
「そう。零番隊結成のお祝い。だからたとえ兄さんでも混ぜてあげることは出来ないの。
今日の話は…十四郎兄さんでさえ言わないで欲しい。
あの人がこれ以上の心労を持つのは…あたしには耐えられない」
「十四郎の場合…これが表に出た時に、逆に気にする気がするけどな」
う。否定できないんだけど。
それもまた、事実。
あたしは一つため息を吐いて、立ち上がる。
「…来週、大虚の討伐に行きます」
「はい?」
「任務に行ったことが無い子たちの教育は、あたしと、秋都がすることになってます。
霊力はある子達だから…手が回らないかもしれないので
兄さんたちの都合がよろしければ、きていただけたらとてもうれしいのですけど。」
「それは…零番隊隊長狛村殿のご命令かな?」
にいさんったら。
あたしがその名でこの零番隊隊長をやっていることを、何で気付いてくれるんだろう。
本当に…兄さんはすごいわ。
「…はい」
「じゃあ、山じいに言っておくよ。そうだな…狛村も呼んでいいのかな?」
「もちろん。事情はその時に、二人にも話すわ」
「全員にあって行っても?」
「…今は駄目」
はいはい。と兄さんが立ち上がって、あたしの髪をそっとなでた。
零番隊の羽織を着る時は…夜一姉さんのくれた、髪留めを使おう
そう、心に決めた瞬間だった。
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一気に流れが進みましたが…。
まずばれるのは、京楽さんって決めていました!
やっぱりこの人が一番だと思いませんか?すべてを見抜く!って感じの人でしょう!
脱稿4月10日。