挿話 緋色の空に… =喜助編=





現世。



浦原商店。



あたしが始めて現世に下りた日


この世界に向かって霊圧を探った。






―見つけた。



ここから、少し離れている町だ。



喜助兄さん以外にも、テッサイさんの気配もする。
…ほかに感じたことのない気配があるなぁ。誰だ?


「…また、会いに行くね、お兄ちゃん」


ぽそり、と空に向かって、つぶやく。







零番隊の任務の後、あたしはあのとき感じた霊圧の元に向かった。
そこにあったのは少し古ぼけた、小さな店だった。

「浦原商店…」

お兄ちゃんらしいな、と思った。
こんなお店、人、来るのかなぁ。
店に近づいていくと死神の姿をしているあたしを見て、すごくびっくりした顔を見せた。

「……何のようだ」
「あなたたち……。えっとね、店長の知り合いなんだけど、会えるかな?もうおきてる?」
「……あ?」
「これはこれは、殿ではないですか!?」
「テッサイさん、お久しぶり。喜助兄さんはおきてる?」


苦笑交じりに中を示されたことで、おきていないことがわかった。
まったく、もうお昼なのに。


あたしがあの子達に背を向け、中に入ろうとした瞬間だった。


『零…?』


あー…いけない、隊長衣着たままだったんだっけ。


「…零、ですと?そういえば殿、なぜ死霸装をきていらっしゃるのでしょうか?」
「死神になったから」


テッサイさんの質問に答えると同時に、後ろの部屋から、喜助兄さんが出てきた。
明らかに今おきました、と言う表情で。


「………珍しいお客ですねぇ。テッサイ」
「お起きになられましたか店長。」

店長、ね。
変な感じだな。死霸装を着ているこの人しか見てきていなかったあたしにしたら。

でも、そんなことは今はどうでもいい。

「…兄さん!」


あたしは、思いっきり飛びついた。
力を込めて腹に一発ぶち込んでやったのだ。
さすがにあんまりこたえてはいないようだけど、痛いのは痛かったらしく、顔をしかめている

「…………サン、いたいです」
「…痛いようにやったのよ!!!!!
つかまる前に一言言ってくれたっていいじゃない!……いってらっしゃいって、言えたのに。
…喜助兄さんのバカ!」
「……すいませんでした。サン」


思いっきりまくし立てた後、今までずっと溜め込んできた涙を思いっきり喜助さんの胸にぶつけてやった。
心配させた罰だい、喜助兄さんのバーカ。

ひとしきり泣いて顔を上げて、目のそばをこすろうとする私。
その前に、しっかりと拭かれてしまったけど。

「…落ち着きましたか」
「ん…思いっきりないてすっきりした」
「さて、次はこちらが聞く番ですね。…アタシたちがいなくなったあと、いったい何があったんです、

あー…。さっきの言葉聞かれてたかぁ…。
…どこから説明したものかなぁ…。
あたしがそう悩んでいることにも気づいてくれたのか、促すように口を開いてくる。


「死神になったって言う説明は要りませんよ、見たらわかりますから」
「…えーっと、一応十一番隊の四席。……それから、じいちゃんが、あたしが王族特務に入らないですむように
特別部隊零番隊ってものを作ることを上に提案してくれて、今に至るんだけど…」
「…なるほど。それで見覚えのない隊長衣をが着ているということですか」
「うん。で、今日は零番隊の方の任務だったから」

改めて話をする体制になってから、簡略化して、事情を説明した。
大体のことは喜助兄さんも知ってるからどうにでもなるんだよね。
出迎えてくれた小さな二人が苦笑交じりに喜助兄さんをつかんでいる。


「…店長」
「あぁ、紹介がまだでしたね」
「改めて。初めまして、狛村です。お名前、教えてくれる?二人とも」
「……紬屋 雨です」
「花刈ジン太だ」

身だしなみを直し改めて喜助兄さんを見る。

「ここってもしかして、こっちの世界の商品も置いてる?」
「………置いてますけど」
「じゃあ、ちょくちょく来てもいい?零番隊の方のわざわざ上に頼むの面倒だし」
「…かしこまりました。基本的にはサンがくるんですか?」

ふふ、商人の顔になってるよ、喜助兄さん。
結果的にはこっちにきて、よかったのかもしれないね。

「…うん、基本的には。たまに隊員たちが来ることになるかも。今度また、顔見せさせるわ」
「わかりました。単純に目印を教えてください」
「んー…これ、かな」

あたしは、腕の隊章を見せる。
今は零番隊の方しかつけていないからわかりやすいよね。

「……シルビア…緋衣草、ですか。」
「うん。うちの隊章、これだからね。」
「………わかりました」

ちょっと残酷だったかな?
でも…あたしにとってとても大事なものなんだよ。喜助兄さん。

「夜一姉さんは?」
「ふらふらしてますよ。猫のままで」
「そっかー。また戻ってきたら連絡して。こっちの伝令神機は零番隊用にしてるから」


伝令神機の連絡先を告げて、あたしは佇まいを戻す。


「はいな。そろそろお帰りで?」
「これ以上遅くなると隊員たちに心配かけちゃうからね。」
「…そうですか。では、また、ですかね?」
「うん。またね」


浦原商店から出たあたしは、空を見上げた。

あの時の空ではなく、もっとあったかい空だった。



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挿話的には、書きたかったもののひとつです。
喜助さんに泣きつく主人公が書きたかったんですよー。