もっと早く。
あの時以来、私はなぜか、隊長のお傍に居る時間が増えた。
副隊長いわく、『素顔をしっとる人間は少ないけぇの』ということらしいんだけど。
そんななかで。
「そういえば、明日は隊長、お誕生日では?」
「…………そういえばそうだな」
「えっ!?」
思わず副隊長の言葉に隊長とほぼ同じタイミングで叫んでしまった。
うそ!
明日とか、何も準備できない!
あわてた私は副隊長の存在も忘れて隊長の前に立った。
「隊長、何か欲しいものとかないですか?!」
「…どうしたのだいきなり、六席」
「…誕生日のお祝いです!欲しいものないですか?」
私と副隊長の前では、少しずつではあるけれど、笠を外してくださる隊長。
おかげで表情が少しずつ読めるようになってきていた。
…え、いやだったの、かな?
「…隊長、ないんですか…?」
「い、いや…その…あまり祝われた経験がない物でな…」
「そうだったんですか…。」
うーん…好きなものとかあんまり知らないしなぁ…。
どうしよう。
ココはひとつ定番でいくしかないのかなぁ…。
うーん…。
「まぁ、恒久の時を過ごしてきているし…誕生日もいささか意味のない物でもあるがな」
「……でも、私にとっては初めてお祝いできる隊長の誕生日なんで……うーん…何がいいかなぁ…」
「……………」
隊長が静かになってしまったとき、私はお祝いを考えることに必死で
表情を見逃してしまったけど、あとから副隊長に聞いた話によると
照れくさそうで、そして嬉しそうな、見たことのない表情だったらしい。
そして、翌日。
商店街を歩き回って、必死に悩んだ結果みつけたのは
小さな鈴の付いた、月の根付だった。
生まれ変わる前に読んで、隊長の素顔を見てから思い出した
『人狼』の変身のきっかけ。
これは三日月だけれど。
いつもどおり、朝のご挨拶もかねて、隊舎を尋ねる
「六席です」
「入れ」
「失礼いたします」
そこには、東仙隊長もいらっしゃった。
…びっくりした。
「…じゃあ、私もそろそろ隊舎に戻るよ」
「あぁ、いつもありがとう」
机の上には、なにやら包みがおかれている。
東仙隊長も隊長の誕生日をご存知だったんだろう。
東仙隊長が隊舎から出ていかれたあと、私は隊長の前に立った
「あの…誕生日、おめでとうございます!これ…ささやかですけど…私からのお祝いです!」
小さな包みを差し出す。
隊長の大きな手に収まってしまう。
「…これは?」
「根付、です。月だったから…」
「月、か。…ありがとう、大切にしよう」
笠を外して言ってくださった隊長に、私はまたついついもふもふしてしまった。
…いいのかな、と思いつつも
数日後、私は、隊長の大きな剣の束に、あの根付が付いていることに気づいた。
…少し恥ずかしいのと同時に、言葉通り大切にしてくださってるのだと、嬉しく思った
Happy Birthday!
Sazin komamura
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カンファで明日が誕生日だと言うことを改めて思い出して
必死に突発で書きました。
誤字脱字は、もうじゃんじゃん突っ込んでください。
8月22日脱稿