ご褒美と甘いシロップ


「うあっついですよー…」

もう暑くて暑くて溶けてしまいそう。どうして死覇装は黒なんですか。もう熱を吸収しまくってなんて言うかべったり張り付いてどうしようもないって言うか。
第一私の席が悪い!何で窓際なの!?別に立場が窓際なわけじゃないですよ。一応これでも席官ですよ。
席次順に配列したら、ちょうど私の十席と言う席次が窓際に当たったと言う。
冬場は有難くすらあった日の光も、今は恨めしいばかり。
曇れ!曇るがいい!いっそ大雨が降ればいい!
私は暑さのあまり一度筆を置くと、願いを込めて空を睨み上げた。
勿論そんな事で雲行きが変わってくれるはずもなく、日の光は馬鹿じゃないこいつとでも言わんばかり誇らしげにぎらぎらと輝いてる。

「もーホント暑いよ〜」

ふと、九番隊の檜佐木副隊長を思い出した。
袖なし死覇装はさぞや涼しそう。
思うと同時に袖をがばっと捲ってみた。おお〜。涼しい。
そして次に十二番隊のネムちゃんを思い出す。
足を出してるのもきっと涼しいはず。
私は真顔で袴を捲り上げようとした。

「いっそ何故か唐突に日番谷隊長が卍解してくれればいいのに」
「…何をやってるんだ
「あ、浮竹隊長。暑いので袴を捲くろうかと」
「やめなさい」
「えー!あっついですーーー!」
「ついでに恐ろしい事を口走るのもやめなさい。日番谷隊長が聞いたらびっくりするじゃないか」
「だってきっと日番谷隊長が卍解してくれれば涼しいです」

真顔で言い切ると、浮竹隊長は額を抑えて溜息を吐いてから、何かを思い立ったように私を見た。

「そう言えばそろそろ休憩だな」

その言葉に時計を仰ぎ見れば、確かに3時になろうとしている。やった!この席を離れられる!!

「確かにこの日差しじゃ、この席は辛いだろう」
「辛いですよ〜!もう朝から暑くて私の中の何かが溶け出してしまいそうです」
「じゃあ、甘味処にでも行くか?」
「行きます!かき氷食べたいですカキ氷!」

私は浮竹隊長の腕にがしっとしがみつくと、必死な目で訴えた。
浮竹隊長はまったくしょうがない、とか呟きながらも承諾してくれる。
やった!かき氷!
いっそその氷の粒を頭から引っ被りたいくらいだけど、体の中から涼むのも悪くない。
私は寧ろ浮竹隊長を引っ張るようにして隊舎を飛び出した。



浮竹隊長と連れ立って甘味処へ向かったら、途中幾人かの死神にぎょっとした顔で見られた。
そりゃそうだ。どこぞの席官(とくに名が知れ渡ってるわけでもない)が隊長を引き連れて歩いてるんだもん、びっくりされて当然だろう。
私だって他隊だったらそんな大それた事しないですよ〜。
浮竹隊長はなんて言うか、そう言う垣根をあまり気にしない人だって言うか。
私が十三番隊に入って、席官に就いてすぐ気安く名前で呼んでくれたり、何かと構ってくれたりしてる。それが嬉しくて、いつの間にか私はこの年の離れた隊長の事が大好きになってたり。
十三番隊の隊員はきっとみんな浮竹隊長が好きだよ。でも、私はもっと好きだもん。

?甘味処行き過ぎるぞ?」
「え?あ!」
「大丈夫か?暑さでぼんやりしてるとか…」

凄く心配そうに顔を覗き込まれてしまった。

「そそそ、そんなんじゃないです!ダイジョブです!さあ、カキ氷!」

思わず焦って浮竹隊長の腕を思いっきり引っ張ってしまったじゃないですか。あーびっくりした。
よく考えたら腕捕まえたままここまで来るほうがよっぽど恥ずかしいんじゃないかと思ったけど、じっと顔を覗き込まれる事のほうが私には恥ずかしい。
照れちゃうじゃないですか。
さてそんな事よりカキ氷ですよ!
うーん、シロップ何にしようかなー。

「浮竹隊長何にします?」
「俺か?そうだな…宇治金時かな…」

真剣な顔で考えた後、そう答える。
宇治金時かあ。それも捨て難い。
うー…ん、でも定番のイチゴシロップもまた…いやいやレモンとかブルーハワイもまた…メロンも…。

「3時の休憩終わるぞ〜」
「いやだって悩みません、こう言うの?」
「じゃあ今日は一番端のイチゴにして、毎日一つずつ制覇していけばいいじゃないか」
「毎日連れてきてくれるんですか?」
「別に構わんが」
「じゃあそうします!おじさん!イチゴと宇治金時お願いしま〜す!」

いやった!毎日カキ氷!毎日浮竹隊長!
そういうご褒美があるなら暑い日も悪くないですよ!



「ん〜!キーンとするー!」
「一気にかきこむからだ」
「これがカキ氷の醍醐味ですよ浮竹隊長!」

言いながら、しゃくしゃくとカキ氷をかきこむ。
うっはぅ〜!こめかみに!キーンと!
ガラスの器を伝う水滴が手を伝うのも構わず、私は器に頬ずりした。
ひんやりして気持ちいい〜。

「あの席はまずいな」
「何がですか?」
「簾でもつけようか」
「あ!賛成!何なら自費でつけます!許可いただければ!」
「いやいや、それくらい隊費で落すよ。早速言っておくか」
「お願いしま〜す」

簾があれば随分違うだろうな〜。
でも、カキ氷のご褒美がなくなっちゃうのはちょっと…かなり寂しいと言うか。
これが夏の間中ずっとご褒美として続くなら、いっそ簾要らないんですけど。
浮竹隊長とカキ氷。猛暑を耐えるに値するご褒美です。

「何を唸ってるんだ?」
「あ、いや、カキ氷制覇する前に簾が届いちゃったらどうしようって」
「ああ、カキ氷はいつでも連れて来てやるぞ。簾は関係なく」
「え!?ホントですか!?」

そっか、男の人一人でカキ氷とか来づらいですよね。
そんな事情ならいつでもお供します。えへ、役得!

「それにしても本当に暑いな」
「ですね〜。でも私、夏の空って好きですよ」
「空?」
「はい。なんだか手が届きそうに空が近くて、心がうきうきするんです」

暑いのは勘弁して欲しいけど、ホントに夏の空は手を伸ばせば届きそうでわくわくする。
あのふわふわの雲に触れるんじゃないかって、そんな風に思えて。
勿論、手を伸ばしても届かないことなんてわかってるんだけど。
まるで浮竹隊長のようだ。
夏の空はまるで、浮竹隊長のよう。
遠いようで近いようで、やっぱり遠い。
こんな風に一緒にかき氷を食べてくれたりするけど、十席の私からすると隊長と言う存在は雲の上のようで。

「うきうきしている顔じゃないように見えるが」
「…そんな事ないですよ。あ、カキ氷ご馳走様です!そろそろ戻らないとですよね」
「ああ、もうそんな時間か。早いな」
「ですね。就業時間は永遠、休憩は一瞬です」

大袈裟に天を仰いで見せると、浮竹隊長は声を立てて笑った。
この顔が好き。
笑顔を絶やさないでいてくれる浮竹隊長が好き。

「先に戻ってていいぞ。俺はもう少ししたら行くから」
「そうですか?それじゃあお言葉に甘えてお先に失礼します」
「ああ、また明日な」
「はい!約束ですからね!」

シロップを全種類制覇したら約束は終わってしまうのだろうか。
それなら、甘味屋さん、シロップの種類をとめどなく増やしてほしい。
なーんて。贅沢!
明日の約束があるだけでも私には幸せだ。
明日はレモン。
暑いのはホントは嫌いだけど、このご褒美がうんと甘く感じられるなら盛大に晴れればいい。
私は届きそうで届かない夏の空を眺めながら隊舎へ戻った。



「いつになったら気づいてくれるやら」

跳ねるような足取りで隊舎へ戻るの背中に向けて、浮竹が微苦笑を浮かべる。
構う理由に、果たしていつになったら構われている本人は気づいてくれるだろう。
けれど。
構われる理由も一つしかないことに浮竹が気付くのは、まだもう少し先の話。



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浩ちゃんには色々無体を強いているので(笑)、何かリクがあれば!と言ったら、浮竹!と言われました。
は、初めて書くから!(がたがた)
一緒にかき氷を食べるほのぼのしたお話で、どっちかが片思いって言うのもいいね、って
メッセで話してたんだけど、どっちが片思いにしようか迷った末、どっちも片思いにしました(笑)
いやなんか、浮竹隊長も天然っぽいので、ヒロインちゃんもそんな感じで…。
微妙浮竹隊長が偽者ですいませ…!(土下座)

2006/7/29脱稿

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この頃いっぱい妄想を押し付けてたら
何か書くよ!っていってもらったのでちゅけちゃんの初物をいただいてみました…!
浮竹だよ!浮竹だよ!ハァハァ!

もう幸せに浸ってます。