その日の三・四時間目、一番得意で大好きな体育でバスケを楽しみ
お昼休み、食堂で大好きな唐揚げが入ってた日替わり定食(大盛り)を食して
五時間目、睡魔と格闘しつつ何とか数学の授業を受けて
六時間目、ついに睡魔に負けて古文は寝て過ごした
六時間目終了のチャイムで目が覚めた私は笑顔を貼り付けた古文の先生から「課題な」とプリントを二枚頂いてしまった(しかも両面印刷・・・!)
普段SHRが短いことで有名な我クラスは今日、日直が一巡したので席替えを実施することに
うちのクラスの席替え方法はベタにくじ引き
暑い夏に強い日差しが直に当たる窓側はカーテンを閉めても地獄!(公立高校にクーラーなんて素敵なものは教室には存在しない)
そして最前列、とくに先生の前の席は先生によく当たるので皆その二箇所に当たらないように願掛けがしながら順番にくじを引いていく
皆がくじを引き終わった頃に両サイドの教室からガタガタと椅子や机の動く音と「さよーならー」と間延びした挨拶が聞こえる
教室からわらわらと出てきた他クラスの生徒達は騒がしく私のクラスの前を通り過ぎていった
「じゃあ皆席を移動してー」
学級委員のその台詞で皆ザワザワと騒ぎながら席を移動する
私の席は窓側から三番目、後から三番目というまさにド真ん中の席
さっさと移動を済まし席に着くと窓側の隣の席に親友のがやってきた
「あれ、私の隣?」
「そうみたい。やっと最前列から脱出だわ」
「あぁ三連続最前列だったからね。よかったねー」
「そういえば、古文で課題出されてたわね。ご愁傷様」
「・・・さん。古文得意でしたよね?」
「手伝わないわよ」
はニッコリと女神(実際は悪魔)の微笑みで拒否
チッ、やっぱり駄目か・・・
しゅん、とわざと大きく肩を落として落ち込んでいるとポンと綺麗な白い手が頭に乗せられた
「は今日バイトないんでしょ?それにあんたには心強い味方が居るじゃないの」
「・・・それってもしかして兄貴のことですか?」
「もしかしなくても修兵さんよ。修兵さんならが頼めば手伝ってくれるでしょう」
「どうかなぁ・・・・・・って、ねぇ、さっきから外騒がしくない?」
「騒がしいわね、特に女子が」
二人して会話をやめて耳を傾けてみると校庭の方がやたら騒がしい
まだ部活が始まってもいないのに女子のわざわざと騒ぐ声が耳に入ってくる
クラスメイトもそれに気付き、わらわらと窓側に集まる
と私も窓の傍により、が周りのクラスメイトと同じように外を窺う
「何かあった?」
「誰か居るみたい。制服じゃないから他校の生徒ってわけでもなさそうね」
ほら、とが場所を空けてくれたのでそのスペースに潜り込み窓に張り付き校庭を見る
校庭、というより門の所に大きな女子の塊が出来ている
目を凝らして見ると女子の集団のすぐ傍に一人の背の高い男が居る
その髪型や服装が嫌というほど見覚えがあり、引き攣った笑いが漏れる
中腰になって外を見ていた私の頭の上にが顎を乗せぼそりと言った
「・・・噂をすれば何とやらね」
「そんな暢気なこと言ってる場合じゃねー!!」
突然叫びだした私にクラスメイトは何事かと驚き見てくるが今そんなことどうでもいい!
っーかそれどころじゃないから!!
ひょい、とが空けた場所から出て机の上に置いてあった学生鞄の中に乱暴に筆箱やさっき渡された古文のプリントを詰め込む
鞄を手にバタバタと足音を立て廊下に飛び出してから、はっ!と気付き廊下から教室に頭だけ突っ込んで「先生ごめん!帰る!」と声を掛けて廊下を走り階段を駆け下りていった
「檜佐木まだ連絡終わってないぞ・・・って行っちまったな。おい、いい加減皆席つけー、SHRするぞー。檜佐木には誰か連絡しておけー」
下駄箱で急いでローファーに履き替え、上履きを突っ込み校庭に飛び出した
目指すは沢山の女子が群がる正門の外に立つ男!
自慢の足で一直線に走ると息を大きく吸って叫ぶ
「何で居るんだあぁぁぁ!馬鹿兄貴ぃー!」
私の叫び声で兄貴の周りに居た人と校庭にいた人達は驚いた顔でこちらを見たが当の本人はケロリとした顔で「遅い」と言い放つ
「何の約束もしてないのに遅いとは何だ!遅いとは!そして何でここにいる!っーか何やってんだ!」
息継ぎなしで一気に捲くし立てる様に喋ったのと、教室からのダッシュで流石に息切れ
肩に掛けていた学生鞄をドサリという大きな音と共に地面に落とし、大きく肩で息をする
兄貴は私の傍までやって来て、左手で地面に落ちた学生鞄を拾い上げ、右手で私の腕を掴んで立たせる
「約束ならしただろ、今朝」
「・・・約束なんかした覚え欠片もございませんが」
「お前学校終わった後買い物行くからSHR終わったらすぐ正門来い、って言ったらお前うんって返事しただろ?」
「・・・それって何時の話?」
「今朝」
「だから今朝の何時の話だってんだよ!」
「お前が起きる約三十分前」
「それ私が寝てる時じゃん!その返事明らかに寝言だって分かってるだろ!」
「あぁ」
「・・・・・・一発殴っていいですか?」
「それよっかここ五月蝿いからさっさと行くぞ」
「無視!?・・・ってちょっと待ってよ!鞄!私の鞄!」
突然拉致られて連れてこられた先は昔からよく買い物に来る街
私はとりあえず鞄を返してもらい、兄貴の半歩後ろをついて行く
「ねぇ、何処行くのさ?」
「あー、買い物?」
「何で疑問文・・・」
「とりあえず何か飲むか?」
「あー、じゃあそこ右に曲がったとこにに教えてもらった美味しいコーヒーの店あるから行こう」
私は歩く速度を上げて兄貴を追い越し、今度は私が前を歩く
道を右折するとオススメのお店は直ぐに見つかった
こじんまりとした店内にはシンプルで可愛らしい雑貨が置かれ、入り口付近には手入れの行き届いた小さなプランターがいくつか置いてある
店にいくつかテーブルがあるようだったが、外から見ると平日にもかかわらず混雑しているようなのでテイクアウトすることにして兄貴と二人店内に入った
店に入ると抑えたボリュームで心地よい音楽が流れていて、数人の店員がいらっしゃいませと落ち着いたトーンで挨拶をすると柔らかい笑みを浮かべた
兄貴とカウンターに行くとそれぞれ違うコーヒーをテイクアウトで頼み兄貴がお金を払った
店員がお釣りを兄貴に渡し、少々お待ちくださいと声を掛けると兄貴の携帯が鳴った
と言ってもマナーモードに設定していたようで、バイブに気付いた兄貴が携帯を取り出し、外に居るから受け取って来い、とだけ言い残して店を出たから分かったんだけど
私は、はいはいと気の抜けた返事をして、コーヒーが出てくるのを待った
暫くするとこの店のユニホームのチョコレート色のエプロンを着けた女の人がお待たせいたしましたという声と共にカウンターに紙コップに入ったコーヒーを置いた
そしてにっこりと笑顔を浮かべ話しかけてきた
「素敵な彼氏ね。羨ましいわ」
「あんな男彼氏なんかじゃありません。一応血の繋がった兄です」
「あら、そうなの?ごめんなさい、てっきり恋人同士だと思って」
「慣れてるんで気にしないでください。よく間違えられるんですよ。顔似てないんで」
「似てない兄妹なんていっぱいいるわよ。きっと貴方達の雰囲気が皆を勘違いさせるのよ。とても仲よさそうだもの。・・・そうだ、お詫びにこれあげるわ」
「・・・このクッキー売り物ですよね?いいんですか?」
「ええ。誰も見てないし、私これでもここの店長なの。素敵なお兄さんと一緒に食べて。それと、よかったらまた来てね」
「はい、是非。ありがとうございます」
ペコりと頭を下げると店長さんは綺麗な笑みを浮かべて、ありがとうございましたと声を掛け頭を下げた
私はコーヒーのカップの上に頂いたクッキーを一つずつ乗せて両手に一つずつ手に持ち店を出た
兄貴は店に背を向けて電話をしていたようだが、私が店を出るのと同時に終わったのか電話を切って携帯をポケットに突っ込んだ
「兄貴」
「おう、サンキューな。って、これ何だ?」
「店長さんがくれた」
「はぁ?・・・・・・何かお前よく食べ物貰うよな」
「・・・今、餌付けされてると思ったでしょ」
「あぁ」
「これは純粋な店長さんの好意!片方は兄貴のために甘さ控えめのやつになってるし」
店長さんがくれたクッキーは片方はあまさ控えめになっている
きっと兄貴が頼んだコーヒーがブラックだからだろう
そういうところまで気が回る人だから若いのに店長としてやっていけるんだろうな
兄貴にコーヒーを渡し、元の大通りに戻る
今度は兄貴の後ろではなくアイスコーヒーを飲みながら隣を歩く
未だに兄貴が私を拉致った意味が分からないまま
「ねぇ」
「あん?」
「いい加減いきなり私のこと拉致った理由教えてよ。私暇じゃないんですけど」
私一人課題が出てるからね・・・!(自業自得だけど)
ぱっと見でこれは時間かかるぞ、と分かる課題が出てるから正直一分でも早く帰って終わらせたい
「・・・、お前何か欲しいものあるか?」
「・・・・・・はぁ?」
「だからお前の欲しいもの言え」
「欲しいもの・・・?そうだな、時間」
「馬鹿かお前、そんなもんやれるわけないだろ」
「突然意味不明な質問するあんたには言われたくないんですけど!っーか何この質問!私が今ここにいるのに何か関係あるの?!」
「お前もうすぐ誕生日だろ」
「へ?・・・あー、そうだね」
「俺明日から暫く家空けるから、今年の誕生日の日には家にいねーんだよ。だから今年は欲しいもん買ってやる」
「だから私をここまで連行してきたと」
「・・・あぁ」
「・・・・・・馬鹿じゃないの」
馬鹿じゃない?
いや、馬鹿だ!
だって彼女とかなら分かるけど妹の誕生日に家に居ないからってわざわざこんなことするか?
確かに我が家は家族の誕生日は家族で祝う習慣があって毎年兄貴は私に何かしらプレゼントをくれたけど、たまたまその日不在になるから好きなもの買ってやるって妹にそんなに気を使う必要なんかないじゃん!
・・・・・・まぁ、そういうところとか結構好きなんだけどね
絶対に口には出さないけど
「兄貴」
「何だよ」
「私、別に欲しいものなんかないよ。その代わり古文の宿題が出たから手伝って。それでいいよ。っーか手伝ってくれると凄く助かるからそれがいい」
「本当にそれでいいのか?」
「うん。だって古文さっぱりだし、明日提出なんだけど夜に観たいドラマあるから早く終わらせたいし」
「欲がねぇな、お前・・・・・・いいぜ、手伝ってやるよ」
「ありがと。助かる」
「どういたしまして」
「兄貴!」
「あん?」
「ありがとう」
笑顔で言うと、兄貴は珍しく悪意が欠片も混じっていない純粋な笑顔を私に向けた
ねぇ、兄貴
どんなに高価なものを貰うのより私はその笑顔の方がずっと嬉しいよ
「おはよう!」
「おはよう。課題無事に終わったの?」
「おうよ!もうバッチリ★」
「それはよかったわね。・・・ねぇ、そんな腕時計持ってた?」
「昨日兄貴が買ってくれた」
「そう。道理でよく似合ってると思ったわ」
私の左手に付けられた腕時計はガラスやビーズ、ラインストーンなどをあしらった物で少しジュエリーっぽいデザイン
これは昨日兄貴が誕生日プレゼントとして買ってくれたもの
課題を手伝ってくれればそれでいいと言ったが、兄貴は折角ここまで来たからと近くの店でこの腕時計を買ってくれた
携帯があるから必要ないかと去年水没させた以来腕時計は買っていなかったが、兄貴がわざわざ買ってくれたなら話は別
これからは大事に毎日使用するつもりだ
腕時計を見て零れる悩みと笑み
「今年の兄貴の誕生日どうすっかな・・・」
Happy Birthday to my sister!
7月末日までフリー配布します。(フリー配布なのに誕生日ネタですみません・・・)
デザインは好きにいじって構いませんが著作権は放棄しておりませんのでその辺は宜しくお願いします。
サイトに転載する場合のご報告は任意ですが、どこかに当サイト名と作者名を載せて下さい。
これからもラズベリーと壱華を宜しくお願いします(にこっ)
「ラズベリー」 壱華
(2006.07.11)
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ラズベリーの壱華ちゃんの檜佐木家シリーズフリー夢です。
とりあえず檜佐木さんみたいなお兄ちゃんが欲しい今日この頃。