私の心配など、始めから必要なかったようですね。

貴女を信じましょう。



『枯れるまで』



「初めまして。私は破面bP1のシャウロン・クーファンです」
「初め・・・・まして。私は「存じています」
「第10十刃、。貴女に確かめておきたい事が有って来ました」

そう言って跪いたシャウロンは、瑠璃色の瞳を縁取っていた涙を指の腹で優しく拭い、を腕に抱き上げた。
は抵抗せずにシャウロンの首に腕を回す。
拭われた瞳からは、新たな涙が零れ落ちていた。




シャウロンとがやって来たのは、階段状に岩を削った広場の様な場所だった。
その岩の一つにを座らせると、その前に立って話を始めると言うシャウロンに、は暗い表情のまま頷いた。


「イールフォルトと私闘を行ったそうですね?」
「・・・・うん。力一杯、蹴っちゃたの私」
「何故ですか?」
「ディ・ロイが死ぬと思ったの。イールフォルトが叩いたから」
「その為に今、ウルキオラとディ・ロイが藍染様の元に説明に行っている事は分かっていますか?」
「ついて行ったら、私は訊いたらダメって。ギンちゃんに言われたの」

イールフォルトとの私戦により、の存在が破面全員に知らされる事となった。
もっとも、藍染の命令で外部に出ているグリムジョーを覗いてではあったが。



「何だ、この霊圧の上昇は!?」

数十分前に響いたのディ・ロイを呼ぶ叫び声と、信じられないほどに膨れ上がった霊圧に、
藍染の元に赴いていたシャウロンは狼狽の声を上げた。

3日前から城内に高い霊力を感じてはいた。
探査回路を全開にすれば容易く感じ取れるその霊圧を、私が常に捕捉し続けていたのもその為だった。
十刃であるウルキオラの隣に常に感じた同等の霊力。
その霊力の高さから、新たな十刃である事が窺い知れた。
藍染様が皆にその者の誕生を知らせぬ事に、些かの疑念を懐きはしたが、主である彼の崇高な考えに、
水を差す様な無粋な事は出来なかった。


「ああ。とイールフォルトの霊圧だね」
「藍染様、この霊圧。と言う者は一体・・・」

藍染は静かに目を閉じて衝突した二人の霊圧を探った。
緊張した面持ちで藍染を見上げるシャウロンに手を翳し黙らせた後、困ったねと言いたげに薄っすらと瞼を上げた。

「シャウロン。すまないがギンにウルキオラ達を連れて来るように伝えてくれ」
「承知しました」
「ああ、それと君はを見てきて欲しい」
「・・・私がですか」
「君はの存在をずっと気にしていただろう。違ったかい?」
「・・・藍染様の仰られる通りです」

藍染の全てを見透かした様な瞳がシャウロンに向けられ、薄っすらと微笑む。
シャウロンは思わず視線を逸らしたが、それが無意味だと自分に言い聞かせ、また顔を上げた。

「藍染様のお考えに背く気はありません。ですが私は、一目だけ彼女を見た事があります」
「それで、どう思ったんだいシャウロン」
「彼女は身も心も幼く映りました。そんな彼女が破面―――藍染様の戦力になるとは、思えません」
「彼女は、とは何なのですか?!」

恐らく、私が一番聞きたかったのはこれの答えだろう。
とは一体何なのか。
それがこの3日間、頭の片隅を支配していた感情の答えだろう。

知りたい、彼女の事を誰よりも深く。
彼女に感じたこの感情の答えが欲しい。
破面となって初めて抱いた、欲望。
そして、疑念。
あの幼いが、破面として生きて行けるのか。
知性を持ったがゆえの、本能の欠落。


「だから、見ておいで。君の答えを私が決めるべきではないからね」
「・・・しばし、御前を失礼いたします」
「・・・・は幼いから、必要なんだよ」

響転を使い、姿を消したシャウロンが居た場所を眺めて、藍染は笑みをより一層深くし、誰にでもなく呟く。
虚空には、確信に満ちた藍染の笑い声が響いた。



「私が悪いことしたのに、何でウルキオラとちいお兄ちゃんが怒られるの!?」
「・・・・怒られる訳ではない。事実を藍染様はお知りになりたいだけだ」
「事実って何?」
「貴女が・・・が、何故怒ったのかを知りたいのですよ。藍染様は」

嘘は言っていない。
藍染様は今回の騒動を利用して、彼女の存在を破面全員に知らせるのだろう。
城に居た者全員が感じただろう彼女の力の顕現に、異を唱える者は現れない。そう確信して。


「私が生まれた日ね・・・ウルキオラとディ・ロイが一番大切な事を教えてくれたの」
「一番大切な事とは・・・?」
「私たちが死ぬ方法・・・・とっても怖かったの」

眉を八の字に下げて、シャウロンの胸元の服を掴みうつむいた。
ぽろぽろと流れ落ちる涙を認めたシャウロンが、頭を自分の胸に軽く当てさせて慰める様にゆっくりと撫でた。
は小さな声で、促されるようにポツリポツリと話を始めた。



ウルキオラの手首から、見た事も無い真っ赤な液体がドロドロと流れ落ちていた。
私にはそれが何なのか分からなくて、ただ首をかしげていて。
そうしたら、ウルキオラとディ・ロイが、『俺たちが死ぬ条件の一つだ』って言って、突然居なくなったの。
突然一人ぼっちにされて、『何処に行ったの』
そう叫んで探し回った。ずっとずっと。歩けなくなるまで。
それでも見つからなくて、気配も感じなくて、生まれた日に言われた藍染様の言葉を思い出したの。

『死ぬと言う事は、消えることだよ
『消える、何?』
『私やギンと会えなくなる事だよ』
『・・・・会えない、さびしい?』
『そう、寂しいよ。だからは死んではいけない、分かるね』
『・・・はい。藍染様』

生まれた時は分からなかった。居なくなる事の本当の意味が。
会えなくなる事は「寂しい」じゃなくて「悲しい」事なんだって知った。
それが分かった途端、涙が溢れて止まらなくて、ウルキオラとディ・ロイと藍染様とギンちゃんの名前を叫んで泣いたの。
それでやっと、隠れていたウルキオラ達が出て来てくれたの。


「・・・シャウロン」
「・・・何ですか」
「私、シャウロンもウルキオラもディ・ロイも・・・・イールフォルトも大好き」
「それは、光栄な事ですね」

涙に濡れた瑠璃色の瞳がグッと上げられ、シャウロンに笑みを向ける。
泣くまいと無理やりに笑みを作って、手を服から離した。
少しだけ皺になった胸元を一瞥した後、の瞳を見下ろす。

「だからね、強くなるの。皆を護れるように」
「皆を殺そうとする『死神』なんて嫌い。皆の方が、ずっとずっと大切だもん私」
「有難うございます。
「うん!シャウロンも心配してくれて有難う!!」

えへへと輝くような笑みを向けられる。
純粋な、裏の無い笑顔。
彼女の感情は、我々虚の本能さえも凌駕する。
無垢だからこそ、他を受け入れ、他に犯されない。
彼女・・・いいえ、は純粋だからこそ戦えると、そう言う事でしょう。藍染様。



貴女を護りましょう。

貴女が唯一恐れる、孤独から。


それがbP1の、私の役目でしょうから。










おまけ

シャウロンの手を引いて広間に現れたが、藍染様にこう言った。

「藍染様、イールフォルトと喧嘩して申し訳ありませんでした」
「もう二度と仲間同士で喧嘩をしてはいけないよ、?」
「はい!それと藍染様・・・」
「まだ何か聞きたい事が有るのか?いいよ、言ってごらん」
「イールフォルトとの仲直りの仕方を教えてください!!」

あの台詞には流石の藍染様も失笑を浮かべていたな。
私とギンは思いっきり噴出していたし。
案外、藍染様は保父にもなれるのでは無いだろうかと思ったのは、此処だけの秘密だ。

ギン。藍染様に言ったらお前が藍染様の団子を取った事、同じ様にバラスからな。

○月×日  担当 東仙 要        成長日記より抜粋





あとがき

おまけは遊び心ですv
きっと藍染様以外の破面軍が順番で、「成長日記」と母子手帳代わりに付けているんですよ(爆)
順番は、要→ギン→ウルキオラ→ちい兄ちゃん→ヤミー→イールフォルト→グリム嬢→シャウロンで一周。
エドラドは字が汚くて外され、ナキームは論外で(酷)順番凄く真面目に考えちゃった。
おまけの為にシャウロンの台詞だいなし(爆)