認めてしまえば案外、簡単なものだと今更になって気付かされた。
確かに、コイツは特別だ。
認めてやるよ、・ ―――― 俺の兄妹。
『つながり』
が破面として生まれて早3日が過ぎた今日、それは起こった。
はその日もウルキオラと行動を共にしていた。
生まれたばかりのにとってウルキオラは正に、世界との繋がりを作る者だったからだろう。
自分の存在を知らぬ者でも、同じ十刃のウルキオラの事なら知っている。
今ではすっかり仲良しなディ・ロイがそうであったように、の存在は藍染によって公言されていなかった。
藍染が公言を避けたのは、と同胞との衝突を防ぐ為。
破面の中にはヤミーのように探査能力に欠ける者も居れば、グリムジョーのような気性の荒い者。
まるで人間そのもののように、千差万別な者達が集まっている。
その集団をまとめる絶対なものが『力』だった。
藍染から十刃としての称号を与えられた者達は、bP0以下の者達を従える絶対の権限を持つ。
だが、この・がその称号に値するだけの力を秘めているのかと訊かれれば、
教育係としてこの3日間行動を共にしていたウルキオラにも分からなかった。
『力』の証明とは成り得はしないが、の内に秘められた莫大な霊圧だけが、彼女が十刃である事を認めさせていたに過ぎないのだ。
からは到底、殺戮能力などと言う言葉は出ないだろう。
「ねえねえ、ウルキオラ?」
「・・・・・何だ、」
思案に耽っていたウルキオラが、自分の足元を歩いているに視線を落とした。
「ウルキオラはウルキオラって呼ばれるの嫌じゃない?大丈夫?」
「『ちい兄ちゃんディ・ロイ』の事か」
「うん!ディ・ロイは小さいお兄ちゃんって意味でね、好きな方で呼んでいいって!!」
「俺はウルキオラのままで良い。ものままだ」
「分かった。ウルキオラはウルキオラだもんね」
たったそれだけの事を、は幸せそうに口にする。
彼女の考えている事など、表情を見れば分かる。否、分かるまでに成長したのだ、彼女は。
初めて対面した時の彼女に表情は無く、能面という言葉意外当てはまらなかった。
だが生まれたその日に、はウルキオラとディ・ロイに出会った。
破面としての知識と戦術はウルキオラから。
言葉やしぐさ、そして表情をディ・ロイから学び取った今、が嘗ては能面のようであったとは、想像も付かないだろう。
それほどまでに彼女の顔には、笑みが溢れていた。
「ウルキオラ、ちいお兄ちゃんが居るよ!ね、会いに行ってもいいでしょ?」
「後でちゃんと修行をするのならな」
「ちゃんとやる――――!!」
「なら良い。と、イールフォルトも一緒か・・・」
ウルキオラの表情が僅かに強張る。
「、俺の側を離れるなよ」
「う、うん」
ウルキオラの纏う空気の変化に、はウルキオラの袴を掴み頷いた。
数十メートル離れた場所に居たのは、ディ・ロイと、破面bP5のイールフォルト・グランツだった。
「ちいお兄ちゃん!!」
「。今日の修行はもう終わったのか?」
「ううん、この後でやるの」
「オイ落ちこぼれ。何だソイツは」
「イールフォルト!その呼び方いいかげんやめろよな!!」
「フン。本当の事を言ったまでだろう。なあ?兄弟」
を抱上げたディ・ロイではなく、後から歩いて来たウルキオラへと言葉を繋げたイールフォルトに、は眉を顰めた。
「・。3日前に第10十刃として生まれた者だ」
「兄弟。冗談はこのカスだけで十分だ」
「・・・ちいお兄ちゃん」
「こんなガキが十刃のわけがないだろう。仮に十刃なら何故、藍染様が皆に知らせない?」
イールフォルトは見下す様な視線を、ディ・ロイの腕から床に下ろされたに向ける。
はディ・ロイとウルキオラの、何処か緊張にも似た暗い表情を交互に見上げた。
2人の見た事も無い冷たい表情に、の心にモヤモヤとした言い表せない不快感が広がる。
「きゃう!!」
「!」
「イールフォルト!!」
「何だウルキオラ?お前らしくもない。・・・この程度で騒ぐなよ」
の顎を突如掴みその身体を持ち上げたイールフォルトに、ウルキオラが制止の声を上げた。
だがイールフォルトは涼しい顔で尚もの身体を持ち上げる。
は小さな両手でイールフォルトの腕を掴み、落下しないようにするのが精一杯だった。
「イールフォルト!を放せ、そいつはまだ何も知らないんだぞ!?」
「カスの分際で俺に触るなよ、ディ・ロイ!!」
「――――ッツ!」
「ディ・ロイ!!!」
の悲痛な叫びが孤城に木霊する。
の瑠璃色の瞳に映ったのは、ディ・ロイが自分を引き剥がそうとイールフォルトの腕に掴み掛かり、
それを阻止する為に振り上げられたイールフォルトの左腕が、ディ・ロイの頬に音を立ててぶつかったところだった。
漆黒の床に、滴り落ちた数滴の血が、黒に呑まれる事無く赤々と色を発つ。
ソレが引き金となるとも知らずに、瑠璃色の瞳に映った瞬間だった。
ガシャンンン!!
の顎を掴み上げていた筈のイールフォルトの体が、真横に吹っ飛ばされる。
その様を目で追えたのは、同じ十刃であったウルキオラだけ。
音が十メートル程、離れた場所で聞こえた事にディ・ロイが振り向く。
粉塵が舞う中には、たった今まで目の前に居た筈のイールフォルトと、咽にあてがわれた彼の斬魄刀。
斬魄刀をその不似合いな白い腕に握る、灰色の瞳をしたの横顔。
ただ何の感情も無く引かれようとする腕を、響転を使って移動したウルキオラが掴んだ。
「、イールフォルトは仲間だ。仲間は殺してはいけないと初めの日に教えただろう」
「・・・・・ディ・ロイが死ぬの嫌」
「ディ・ロイはあの程度では死なない。大丈夫だ」
「血が流れたら、ウルキオラもディ・ロイも居なくなった!」
「ちゃんと戻って来た。ディ・ロイ、来てくれ」
「あ、ああ!」
斬魄刀を握り締めたまま離さないをそのまま抱上げるウルキオラ。
灰色に変化したの瞳孔が収縮と拡張を繰り返し、涙を流し続ける。その顔を恐怖の色に染めて。
ウルキオラの首に縋り付き、存在を確かめる様に上着を握り締めた。
無機質な音を響かせて、一本の斬魄刀が床へと落ちる。
瓦礫に力なく凭れ掛かりながらイールフォルトは、それを見詰めていた。
「ほらよ、お前の斬魄刀」
「・・・・・」
「はあ、まあ良いけどよ。でも、にだけは謝れよイールフォルト!」
「・・・・本当に何なんだあのガキは」
剥き出しの斬魄刀を片手にイールフォルトの部屋を訪れたディ・ロイが、ベットの片端に座っていた持ち主の横に投げ落とす。
返事をしない彼に小さく溜息を吐いて部屋を去ろうとした時、彼にしては慎重な声が漏らされた。
それに、部屋を去ろうとしていたディ・ロイが振り向きただ一言、あっけらかんと言った。
「特別な妹」
その言葉だけを残して、ディ・ロイは姿を消した。
部屋に残されたのは、言わずと知れた部屋の主、イールフォルト・グランツだけ。
「だから・・・・何が『特別』なんだよ、役立たず」
そんな悪態にも答える者は居ない。
ただ一人きりの部屋こどく。
との騒動から2日後。
「イールフォルト、入るぞ」
そう言って返事も待たずに入って来たのは、ウルキオラと顔を泥で汚しただった。
入り辛そうに俯いてドアの前から動こうとしないに、痺れを切らしたイールフォルトが入るように怒鳴り付ける。
ビクリと一度は目を瞑っただったが、決心したように顔を上げ、イールフォルトの前まで進み出ると
後ろ手に持っていた竜胆の花を差し出した。
「本当はイールフォルトと同じ黄色の花を探したの!」
「・・・・青だな」
「藍染様が黄色の花はまだ先だって言ってたの。だから竜胆あおなの」
「お前、藍染様に何を聞きに行ってるんだ?!」
「イールフォルトと仲直りする方法、教えて貰ったの」
真っ青になって絶句するイールフォルトに、真剣な目をしたが続ける。
「怒ってごめんなさい!」
「・・・・」
「早く良くなってね、イールフォルト!!」
「・・・あ!待てよって・・・・ウルキオラ・・・」
「貰っておいてやれ。お前の為に現世にまで降りる許可を取ったのだからな」
「・・・・・お前まで言い逃げするなよ、ウルキオラ」
膝の上に頬杖を着いたイールフォルトが、開け放たれたままの部屋のドアを見詰めて呟いた。
確かに『特別』だ。
一昨日までは無かった竜胆の花を、小さなガラスコップに挿して、
一人ではない部屋を後にした。
あとがき
イールフォルト蹴ってゴメンねv<ハートで!?
がキレた理由は色々とあるのですが、長いので省略しました。
違う人のお話で書けたらと思います(笑)
ディ・ロイの「ちい兄ちゃん」はちゅけさんから『破面一家』の称号を頂いたので使ってみました。
破面連載『破面一家』でお願いします!(>w<)/