本当に怖い事は、知らないことじゃない
知ってる方が、怖いんだぜ


『鉱物の瞳』


俺は破面bP6のディ・ロイ。

ヤミーは、現世はクソだのつまんねえ処だと文句を垂れるけどよ、俺はケッコー気に入ってる。
確かに霊子が薄くて息しづれえ時もあるけどよ、虚圏に無いもんが山のようにある。
俺が今喰ってるのも、そんな物の一つだろうぜ。



「よおウルキオラ。お前もコレ喰うか?」
「ディ・ロイ、また現世に行っていたのか?」
「そ、市丸の分もついでにパクって来たとこ」
「市丸なら恐らくは自室に居るだろう。さっき帰って行ったからな」

ウルキオラはそう言って歩いて来た道を肩越しに振り返る。
相っ変らず表情の変わらねえ奴だなと俺は思ったが、それはあんまりにも何時もの事過ぎて突っ込む気すらおこらねえ。


「んでさ、さっきから気になってたんだけど。ソイツって何?」
「?・・・・・ああこいつの事か」

俺がウルキオラの足元を指差すと、ウルキオラも俺の指の先を辿ってソイツに視線を落とした。
自分の袴を掴んでる奴の事を忘れるなよ・・・。
それとも、ウルキオラにとっては覚える価値も無い奴なのか?


、さっき渡した紙を見ながらで構わないから名乗ってみろ」
「・・・・うん」
「??何なのコイツ?」
「ちょっと待ってろ、ディ・ロイ」
「ふーん」

ちょっと意外だった。
ガキの頭を無造作に撫でて、命令するではなく促す様な言葉を吐くウルキオラ。
俺とウルキオラが話してる最中、ずっと俺の事を見上げて来てた能面顔のガキが、
頭を撫でられた途端、眩しいぐらいの笑顔を作った事。

ちょっとじゃねえ、全部が意外だった。



「・・・初めまして」

右の手を胸の前に当て見よう見まねといった感じに頭を下げるガキ。
その動作に純白の長い髪がサラサラと胸元に流れ落ちて、髪を束ねているのが仮面の欠片だと気付かされた。
恐らくウルキオラが教えたのだろう挨拶をすると、乱れた髪をそのままにして俺を真直ぐに見据える。

「私はで・・す?・・・・ウルキオラ・・」
「紙を見て構わないと言っただろう、
「生まれたばっかなんだな、お前」
「うん。誕生日なの私」
「そりゃ、おめでと」
「ありがとう。ディ、ディ・・・」
「ディ・ロイな、
「ディ・ロイ」

見下ろすよりもしゃがんだ方が話しやすいと気付いた俺は、このと名乗った破面と目線を合わせる。
ついでに乱れた髪を手で梳きながら背中の方に戻してやる。
俺の髪とは違う、柔らかな手触りを楽しんでいると、俺の名前を呼ぼうと口の中で呟くのが聞えた。
能面だと思っていた顔にも、徐々に表情と言えるものが見えてくる。


俺にもそれでピンと来た。
は虚であった時の記憶が欠落しているのだと。
破面へと生まれ変わる時の衝撃で、記憶の一部が無くなったのだと推測を立ててみた。
現世でも「記憶喪失」になって、離れ離れになっていた恋人同士がまたくっ付くってドラマ見た事あるしな。
きっとみたいな感じの事をそお言うんだろ。




良く出来ましたと、の小さな頭を撫でてやる俺に今度は小さな紙を取り出して朗読を始める
ウルキオラは相変わらず突っ立ったまま、を見下ろしている。
首が痛くなっても知らねえぞとは、心の中でだけ呟いておいた。


「私が第10十刃なのは、グリムジョーには内緒にして下さい」
「ハア?!十刃なのかよ」
「俺もさっき知らされた事だが・・・」

ポカンと口を開く俺に、静観を決め込んでいたウルキオラが淡々と説明を始めた。
俺と何故かもその話を大人しく訊いている。
この何にも知らないが、十刃とはねえ・・・・。




「あ、飴玉無くなってた・・・・」
「飴玉?」
「そ、飴玉。も喰ってみるか?」
「うん?」

何となく市丸に現世の菓子をやりに行くよりも、の後を付いて行った方が面白そうだと踏んだ俺は、
ウルキオラの厭きれ顔は見なかった事にして隣を歩いた。
カラカラと飴が歯に当たった時、特有の音を楽しんでいた筈だったのに、2人と話している間に溶けてしまっていたらしい。


手に持っていた菓子袋の中身を、首を傾げながら覗き込む
は現世の菓子を知らないのか、透明の包装紙にくるまれた蛍光色の飴玉を一つだけ摘み出した。
てっきり赤の飴を選ぶと思っていたのに、が取り出した色は緑だった。
小さな掌に乗せた飴をじっと見つめている。


「こうやって喰うんだよ」
「・・・・・・」

俺が飴玉を口に放り込むのを見た後、また手の上の飴に視線を戻す。
は今、この飴玉を表現する言葉を捜してるんだろうなと、口に含んだ飴を噛み砕きながら眺め続けた。

宝石って言葉も、きっとまだ知らねえんだろうな。
鉱物って言う、石の結晶体みたいなもんから宝石っていう物が作られる事も。
何かを殺す為に生まれたって事も。
その飴玉が、作り出した人間達に少なからず、有毒な物質を含んでいる事も。

自分が死ぬかもしれないって事も。
知るってことの恐怖を知らないんだろうな・・・は。




「ウルキオラの瞳の色と同じだね、ディ・ロイ」
「・・・・・・」
「・・・そうだな」


息が詰まるかと思った。
思いながらも、何とか出た自分の声にほっとした。



の瞳の色の飴もあるんだぜ」
「本当!?」
「ほら、ソーダ味」
「ありがとう、ディ・ロイ!!」

ソーダ味の飴玉を受け取ったが、青リンゴ味の飴玉をウルキオラに差し出して笑った。
差し出されたの手から飴玉を受け取るウルキオラが、「いいのか」と俺に視線を送る。
俺は笑うのを必死に堪えて頷いてやった。


「ディ・ロイの色も探そう!」
「あーじゃあ、レモン味だな・・・・」


何も知らないに、俺の知ってることを教えよう。

そうすれば、知る怖さに一人で脅えずにすむだろうから。


の為に、俺がレモン味の飴が嫌いな事は教えないでおこう。


本当に怖いのは、知ることだから。










あとがき

絵茶会の次の日に颯爽と書いたのがコレです。参加者の皆様から力を貰いましたvv

ディ・ロイは現世かぶれだといいのにとか思って書きましたvv
チュッパが似合いそうですが、あえて飴玉にしてみました。
ディ・ロイの瞳は金色系かなと思っています。色が違ってたらごめんなさい。



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えへへへへ。灰姫様からいただきました、破面夢でした。
連載と化してるそうで…。続きが楽しみです…!

浩加